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2017年4月13日(木)

主張

包括ケア・介護法案

地域の公的支援 後退させるな

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 自民・公明の与党が衆院厚生労働委員会で、安倍晋三内閣提出の「地域包括ケアシステム強化のための介護保険法改定案」の採決を強行しました。同法案は、一定所得以上の人の利用料を3割負担にする介護保険改悪にとどまらず、「地域共生社会の実現」の名で、高齢者、障害者、障害児などの施策に対する国・自治体の公的責任を大幅に後退させかねない仕組みづくりも盛り込んだ重大なものです。一括して改定する法案数は約30にのぼります。地域の社会保障の将来に影響を与え、暮らしに深くかかわる法案を、数の力で押し通すことは許されません。

住民に“丸投げ”の危険も

 改悪法案は(1)利用料3割負担を介護保険に初導入するなどの制度改悪(2)「自立支援・重度化防止」などをうたった「地域包括ケアシステムの深化・推進」―が柱です。

 3割負担は、一昨年8月から2割負担に引き上げられた約45万人のうち、年金収入等340万円以上(単身者の場合)などの人(約12万人)が来年8月から対象になります。「2割」などによって負担に耐えられず特別養護老人ホームを退所したケースもうまれているのに、その実態をまともに把握せず、負担増ばかり迫る安倍政権のやり方に医療・介護の関係者、家族らが怒りを広げています。

 全市町村が介護の「自立支援・重度化防止」に取り組むことの「制度化」も大きな問題をはらんでいます。“介護費用を抑制”した地方自治体にたいする国の財政支援を手厚くするというものです。いまでも介護保険から利用者を無理に「卒業」させたり、介護認定を厳格化し「門前払い」したりしている一部自治体のやり方に批判・懸念が寄せられています。この手法をモデルにするかのような法案は、必要な介護から利用者を締め出す事態を続発させかねません。

 「地域共生社会」の名目で高齢者、障害者などへの施策をひとまとめにする「『我が事・丸ごと』地域づくり・体制の整備」は危ういものです。法案では、“福祉サービスを必要とする人たちが孤立しないよう、地域住民が支援する”ことを求める条文を社会福祉法に新設するなどとしています。

 これが公的な社会保障費の削減路線と結びつき、国や自治体が地域福祉から手を引き、地域住民の「自助・互助」に役割を押し付けることにつながるとの警告が障害者団体などから相次いでいます。

 塩崎恭久厚労相は「我が事・丸ごと」施策について「新しい福祉の哲学の転換」と位置づけ、“地域の助け合い”は「日本の原風景」に戻すものとも表明しています。高齢者、障害者などの施策を自主努力や助け合いに“丸投げ”することは、いまでも弱まっている地域の社会保障の仕組みをさらに不安定にする危険な方向です。

国が責任果たしてこそ

 高齢者と障害者の施策を一体化する方向を強めることにも障害者・家族の異論が上がっています。

 地域福祉のあり方を大きく変える法案を、当事者となる障害者らの声や、自治体や地域からの意見を聞く機会も設けないまま、国会審議を急ぎ、法案採決に突き進んだことは乱暴きわまる暴挙です。

 住民に負担を強いる制度改悪をやめさせ、国に社会保障の増進義務を定めた憲法25条に基づく政治へ転換させることこそ必要です。


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