2017年2月5日(日)
きょうの潮流
「ほほ笑みのワールドカップ」。日韓で共催した2002年のサッカーW杯は、世界からそう呼ばれました。対立から友好に向かった両国関係、国境をこえ笑顔で応援する風景。初の試みは大きな成功を収めました▼スポーツ界のみならず、日本の社会にも多くの財産を残したW杯。招致段階から紆余(うよ)曲折のあった大会を実現に導いたのが、当時日本サッカー協会の会長を務めていた岡野俊一郎さんでした▼国際オリンピック委員会の委員をはじめ、国内外のスポーツ界の要職を歴任。幅広い人脈を築いていた岡野さんの存在なしに日韓共催の成功はなかったでしょう。大会10周年記念で韓国サッカー協会の幹部と改めて喜び合ったことをうれしそうに語っていました▼スポーツは世界共通の文化。それに対してマイナスになるようなことはしてはいけない。サッカーや五輪運動を通して主張してきた岡野さん。きっと最近の状況を苦々しい思いで▼南京大虐殺や日本軍「慰安婦」を否定する本を客室に置き、中国や韓国から抗議されているアパホテル。冬季アジア大会の宿舎にもなっていることで両国選手団の反発を招いています。東京五輪をめぐっても競技会場予定のゴルフクラブが女性の正会員を認めていないことが問題に▼東京が2度目の五輪を開くことについて、岡野さんは生前、世界や国民が納得できるような大義、理念を示さなければならないと。東京から、日本から、何を発信するのか。3年半後に迫った今も問われつづけています。