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2017年1月3日(火)

新春劇場

劇作家・演出家 中津留章仁さん

日本共産党書記局長 小池晃さん

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 社会派の劇作家・演出家として演劇界で注目を集める中津留章仁さんと、演劇ファンとして中津留さんの舞台を見てきた小池晃日本共産党書記局長。演劇のみならず、政治の現状と展望、日本共産党についても語り合いました。


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(写真)なかつる・あきひと 1973年、大分県生まれ。劇作家・演出家。劇団トラッシュマスターズ主宰。2011年紀伊国屋演劇賞、読売演劇大賞(選考委員特別賞・優秀演出家賞)など受賞

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(写真)こいけ・あきら 1960年、東京都生まれ。参院議員。2004年日本共産党常任幹部会委員・政策委員長、13年日本共産党副委員長、16年同書記局長

中津留 時代の空気を演劇で伝える

小池 若者と社会問題をつなぐ力

人間の苦しみや機微描く

 小池 明けましておめでとうございます。

 中津留 おめでとうございます。

 小池 「琉球の風」(劇団東演、昨年11月)拝見しました。とても面白かったです。

 中津留 ありがとうございます。

 小池 昨年は、トラッシュマスターズ(中津留さん主宰の劇団)の舞台のほかにも、青年劇場の「雲ヲ掴(つか)ム」(4月)、劇団民芸の「篦棒(べらぼう)」(9月)を書かれて。次は?

 中津留 2月のトラッシュマスターズの公演で「たわけ者の血潮」です。

 小池 タイトルだけで血が騒ぎますね。中津留さんのお芝居を最初に見たのは、トラッシュマスターズの「狂おしき怠惰」(2011年)です。新聞の劇評に、TPP(環太平洋連携協定)後の日本の医療現場を描いているって出ていた。「そんなことが演劇でできるの」と思って見にいきました。

 するとむちゃくちゃ面白くてひきこまれて。それまで、いわゆる小劇場のお芝居って見たことなかったんですよ。あの雰囲気にもしびれて。以来、中津留さんのファンです。

 中津留 僕の場合、わりと社会性の強いことをやっているわけですが、演劇というものが社会に対してできることというか、社会に対してどれくらい有効であるかということをいつも念頭におきながらつくっています。

 小池 観客に若い人が多いですよね。テーマは、TPP、格差、ブラック企業、沖縄の問題…。原発が必ず出てきたり。若い世代が中津留さんの演劇を通じて、今の深刻な社会問題に目を向けるきっかけになっているんじゃないかな。すごい力を発揮していると思っています。

 中津留 以前は社会性の強いものを特にやっていたわけじゃないんです。でも、生きてくる中で、問題意識が出てきたわけです。若い人たちに何を見てほしいかということを考えていくと、自然と社会問題になっていったんですよね。

 小池 僕らは政治の舞台でやっているから、“これはダメだ”“こうあるべきだ”という直線の訴えになりがちです。中津留さんの演劇に出てくる人っていうのは、武器輸出を担う町工場の経営者だったり、「琉球の風」でいえば、沖縄の機動隊員として高江の座り込みを阻止する側で、自分の高校時代の野球部の恩師をごぼう抜きする。とても耐えられないって機動隊を辞めるんだけど、そのあと建設業者としてヘリパッドを造る。そこでしか生きていけない人たちも含めて苦悩を描いていますね。

 中津留 人間の苦しみや、機微を描くというのは、演劇のすごくいいところです。

 小池 「琉球の風」で野球部の元監督が語る場面がありますね。「悔しいやら情けないやら。でも、いま反対運動やめたらおしまいだと思って頑張ってきたんだ」って。あそこでちょっと泣きそうになっちゃった。

 実際に当事者として関わらざるをえない人たちがいるわけで、複雑な思いの中で、“これは許せん”という本当の怒りが生まれてくるっていうか。演劇の力だなと思います。

 中津留 僕らは、市民の知的好奇心を刺激するみたいなことをテーマに置いてやっています。まだまだ見えない問題がきっとたくさんあるでしょうし、そういうものに着眼していくのが僕らの仕事なのかなと。

 ところで、安倍さん、いつまでやるんですかね(笑い)。ほんと、なんとかしないと。明日にでも止めないといけない。

戦後でも屈指の悪政時代

 小池 中津留さんから見て、安倍政権ってやっぱりちょっと異常な感じですか。

 中津留 僕はいま、戦後でも指折りの悪政時代じゃないかと思っています。自民党の同じ人が長い政権を持っているときって、小泉(純一郎)さんのときもそうですけど、いいことがあったためしがない。

 小池 小泉さんのときに比べてもあまりにも異常ですね。一つは自民党の中に異論が全く起こってこない。モノトーン(単色)になっています。

 たとえば、TPPはアメリカがやめるって言っているんだから、全く成り立たない協定になっているのに、「こんなのもうやめようよ」という人が自民党の中から出てこない。カジノも旧来の保守だったら、ちょっと待てよ、となってましたよ。

 だって日本の観光というなら、美しい自然とか歴史的建造物とか文化とか、誇るべきものはいっぱいあるでしょう。それなのに、虚飾の世界というか、カジノで巻き上げたお金を別の人に移すことを“経済成長戦略”だという。しかも、賭博ですから、身を持ち崩す不幸な人が必ず出てきます。そういうことに待ったをかける人がいない。異常ですよ。

 中津留 国としての品格も下がるというか、ほかの国から見たときにカジノが日本にできるっていうのは結構大きいと思うんです。

 小池 カジノもそうですが、安倍政権自体が年金のお金を株式市場につぎ込むという、国民の財産をギャンブルにつぎ込むようなことをやっている。そういう点で、確かに品格が疑われる政治ですね。一日も早く倒さないといけない。

 中津留 そうですね。これは僕だけじゃなく、多くの人がきっとそう願っていますよ。

「異論」には弱い安倍政権

 小池 安倍政権についてみなさんと話していると、とにかく盤石で、びくともしないというイメージを持っている方が結構多いんですよ。ただ、僕はそんなに強さは感じないんですね。非常にもろいというか。

 中津留 僕も同じ印象です。盤石とは全く思いません。あの人は、自分に批判的なものを内部で統率して抑え込んでいる。それは民主主義においてはすごく貧しい考え方です。党内でもっと議論すべきですし、反対意見を言う人たちがいた方がいいはずです。保守ってずっとそうでしたよね。それがないから盤石に見えるだけです。

 小池 おっしゃるとおりです。異論にすごく弱い。多少の異論をも取り込みつつ、一定言うことも聞く。昔の自民党はそういうところもあったんですね。安倍政権にはそういう余裕がない。臨時国会の最終盤には、TPP、年金カット、カジノ解禁と、3悪法をたてつづけに強行しました。強行、強行でやるのは、正面から議論して勝つ自信のなさの表れですね。

 中津留 自分の言うことは聞かせたい、相手の言うことはわからない、聞かない。安倍さんは対話ができない人ですよね。行き着くところ、おじいさま(岸信介氏)の(A級戦犯容疑者としての)汚名をそそぐことと、アメリカとの関係の二大柱だと思うんですよ。そういうふうに解読していけば、すごくわかりやすい人です。

 小池 かつての自民党は、基本的な路線のなかでも一定の振り幅があったんですが、いまそういう度量もなくなって、財界の中枢部の要求だけを忠実に実現し、それ以外のところは情け容赦なく切り捨てる。TPPなんてまさにそうです。

 これは強いように見えて、自民党を支えてきた力であった部分をどんどん壊しているし、安倍政権が倒れたら自民党政治は終わるんじゃないか、ぐらいのところまできていると見ています。

 中津留 本当は異論がある人はいるんでしょうけどね。でも、党内に現政権に異を唱えるということを美徳としないというか、そういうやり方はちょっと気持ち悪いですね。

 小池 小選挙区制度が徹底してきて、党が立候補の権利を押さえていますから、ものを言えなくなっているというのはあると思うんですけど。それに対して、市民運動の側では、今までにない広がり、高揚が出てきているんですよ。

 中津留 ええ。

市民運動が変わってきた

 小池 戦後かつてない市民革命的な動きが出てきて、市民運動が変わってきている感じがします。安保法制での「ママの会」「SEALDs(シールズ)」もそうでした。かつてない新しい運動が生まれて、その人たちがただ単に市民運動にとどまるんじゃなくて、政治に対して発言している。

 僕は安保法制が強行されたときに、参議院本会議で最後の反対討論をやったんですが、真夜中の2時、3時ぐらい、国会の周りで上がっていたシュプレヒコールは、「野党がんばれ」で、強行されたとたんに「選挙に行こうよ」ってコールされた。今までいろんな運動と国会の政党の動きは分断されていたところがあったけれども、一体となって声を上げる運動に変わってきた。

 僕らもそれに後押しされて、「国民連合政府をつくろう」と呼びかけました。国政レベルで初めて全国的な規模で選挙協力をやろうと提起して、参議院選挙もたたかったんですよね。私たち日本共産党も変わったし、市民の側のたたかいも、量的にも質的にも変わってきてるんじゃないかな。すごく手ごたえを感じています。

 中津留 僕らが政治的なテーマの舞台をやるようになって、もう7、8年たつんですが、そのころから「なんかおかしいぞ」っていう空気が流れていたのは体感としてありました。僕だけじゃなくて、他にも「ちょっとなんかおかしいぞ」って感じた人たちが、同時多発的に政治を批判するような題材をドンと出してきた。

 “演劇は時代の鏡”という言葉があります。いまがどういう時代だったか、何十年かたったときに戯曲を読んで、なるほどこういう空気だったのかとわかるようにしたいですね。安保法制が決まったときは戦後70年が重なる年で、大勢の人が国会前に集まり反対の声を上げたんだという時代の雰囲気が伝わるように。

大きな敵を倒すため組もう 中津留

立場の違う人と心通わせて 小池

芸術の役割 震災通じ発見

 小池 中津留さんの生まれは大分県ですよね。政治的なものに若いころから触れていたんですか。

 中津留 小学校の低学年ころに、東京からフリーのジャーナリストたちが、片田舎の僕の家に取材に来まして。祖父は、日本軍が中国の南京を侵略したときに、南京城にたまたま一番乗りして旗を振って勲章とかもらっているんですよ。そのことで僕の小学校でもちょっとした“事件”があって。祖父は寝たきりだったんですが、ジャーナリストにはなにも話をしなかったそうです。それが自分と社会の関係をつくった一つのエピソードです。

 小池 歴史的な出来事とか戦争と、一人の人間の人生と、そこでクロスしたということですね。

 中津留 それから南京大虐殺の記事とかいろいろ読んで、そんな子どもでしたね。大学では建築を勉強しようと思ったんですけど、俳優の養成所に通ってそこの仲間と劇団をつくりました。最初はコメディーをやっていたんですが、もうちょっと面白い芝居をつくりたいと話して、シリアスな社会問題とか、人間ドラマに入っていきました。

 小池 3・11の東日本大震災の影をお芝居の中に感じます。やはり、大きなインパクトだったんですか。

 中津留 俳優をめざしているころに、ちょうど阪神・淡路大震災があって。あのときに、自分が芝居をやっていることがなんて恥ずかしいんだと思ったんですよ。世の中で一番いらない職業が俳優だと思ってしまって。

 小池 たくさんの人が命を落とし苦しんでいるときに、自分になにができるのかということですね。

 中津留 僕にはなにもないじゃないか。芝居を勉強している身だけど、そもそも建物がなければ芝居もできないし、みんながお金をもっていなければチケット代も払えない。本当に一番いらない職業が俳優だと思って、自分を責めていたんですよ。

 でも、震災のときって多くの人が精神的なダメージを受けるじゃないですか。その心を救ったり、癒やしたり、強くしていけるのが芸術じゃないかということを発見できたというか、発想を変えることができたんです。

 ですから3・11のときは「僕の出番だ」くらいの気持ちで書きました。「黄色い叫び」という作品です。書いていたものを急きょ書き換えて。いくつか賞もいただきました。

 小池 その後、すごく注目されることになりましたね。

 中津留 当時、もともと予定していた上演を中止するかどうか、話し合っていたんです。僕は出演者が全員OKであれば、話を震災ものに変えたいんだと話しました。計画停電に入りそうだけど、途中でろうそくにしたり、手持ちの懐中電灯にするというプランもあると。公演が終わって劇団のメンバーとすぐボランティアに行って。

 小池 どこに行かれたんですか。

 中津留 石巻に。みんなでテントを立てて。ボランティアの泊まる場所もあったんですが、自分たちのことは自分たちでやりますと。場所だけ借りて自炊して、「これをやってください」と言われた仕事をやりました。その体験が「背水の孤島」の中にエピソードとして出てきます。

 小池 なるほど。

憲法守る政治とりもどす

 中津留 共産党はいま追い風というか、議席を増やし、躍進しているさなかですね。

 小池 2013年の参院選挙から、総選挙、統一地方選挙、昨年の参院選挙と議席を伸ばしたんですが、もっと伸ばさなければならないと考えています。安倍政権を倒すために、野党が市民と力を合わせてたたかう必要があります。そのためにも共産党自身がもっと大きくなることが必要です。共産党がこの間、議席を伸ばしてきたことで、国会の中でも存在感が高まり、野党共闘を進める力になっていますから。

 新潟の県知事選挙は、柏崎刈羽原発再稼働反対という明確な旗を立てて、各野党も本気で共闘しました。野党が力を合わせて、市民と一緒になってたたかえば、自民・公明も打ち倒すことができるということを経験しました。

 次の総選挙でも、しっかりした旗を立てて本格的に相互推薦・相互支援してこそ勝てます。

 中津留 野党間では、すごく意見交換をされた方がいいと思います。食い違うところもあるでしょうけど。

 小池 そうなんです。

 中津留 連立政権を組むときは、そこが問題になりますよね。別々の政党であるがゆえ、違いがあってしょうがない部分もありますよね。ある程度、譲れない部分もあるでしょうけど、一緒になって大きな敵を倒すために組むという目的を持つのであれば、話し合えるんじゃないかという気がしますね。何が目的なのか、何のために集まっているのか、ということです。

 小池 安倍政権は憲法というルールがあるにもかかわらず、無視して進むという独裁といっていいやり方ですから、野党は力を合わせて、まず憲法をきちんとルールとして守りぬく、立憲主義をとりもどすことが大事ですね。そのことが一人ひとりの個人を大切にする政治につながるし、原発のような個人の権利も命も奪う最悪のものを止めていく力にもなると思います。

言葉を大切にして伝える

 中津留 共産党の大会の決議案も拝見しましたよ。共産党っていう政党は理念がはっきりしていることが強みですね。それにとてもわかりやすい。一つ一つの政策とか、細かいところまで、僕が書いてきた戯曲とも重なって、共通したところもたくさんあり賛同できました。

 一言いえば、理念に対して現状の矛盾をどうとらえるかですね。たとえば、憲法と自衛隊の矛盾が大きい。この矛盾に対する市民の空洞というか、心のよりどころのなさ、これをどうとらえていくのかに関して、もう少し書き込んでもいい、文脈がほしいなという気がします。

 それと言葉。あえて言葉といいたいんですが、行き違うことっていっぱいあると思うんです。批判するときも、相手の正当性をちゃんと理解しておくということがとても重要だと思うんです。

 小池 それはすごく大事ですね。いまメッセージの伝え方をもっと考えなきゃいけない、自己改革しなきゃいけないと決議案でも強調しているんです。

 とくに市民と野党の共闘という新しい段階にきて、僕らも日々試されている。いろいろと立場の違う、いままでのいきさつも違う、そういった人たちとほんとに心を通わせる、相手をリスペクトする、それがこれからの共闘、新しい政治をつくっていく上で、すごく大事だと思っています。憲法と現実とのギャップ、矛盾をどう埋めていくかという作業も、僕らにとってすごく大事です。

 中津留 安倍政権って、そこを逆手にとっていると思います。空洞を国民が埋めきれないのを逆手にとっている。ですから、そこに対するなにかがあった方が明確になってくると思うんですね。矛盾というものを、見ないもの、自分たちの範囲外だとしてしまうと独裁を許していきます。

世界で劇的変化の可能性

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(写真)劇団東演「琉球の風」成毛章浩撮影

 小池 私たちが世界の動きで注目しているのは、ヨーロッパで市民と連携した運動が政権を担うような動きが生まれていることです。アメリカでも民主的社会主義者を名乗るサンダースさんがあと一歩で民主党の大統領候補になるところまでいきました。

 結局、トランプさんになったけれども、今の閉塞(へいそく)感の現れだと思うし、トランプさんでは絶対解決できません。むしろ格差が広がることになったときに、さらに劇的な変化が起こる可能性があると思います。もちろん、ヨーロッパで極右が台頭する危険もあるし、紆余(うよ)曲折もあるけれども、面白い動きが起こっている感じがしています。

 中津留 昨年、「殺人者J」という芝居をつくったときに、ちょっとそのことに触れていて、トランプという言葉は出てこないんですけど、におわせる場面が2回ぐらいあります。

 EUからイギリスが離脱するとか、格差拡大によって先進国で似たような現象が起きていますね。僕の言葉の使い方だと、先進国の人々が「やさぐれている」と思うんですよ。不信感が強い。大企業はお金をたくさん蓄えている。これに代わる新しい理念とか、新しいシステムを考える時期がきている気がします。

 小池 「やさぐれる」とおっしゃったけど、僕が演劇を見に行くのは、国会とか政党討論会とか出ると、「ささくれだつ」ことが結構あって(笑い)癒やす思いもあるんですね。

 中津留 他の国会議員の方にも勧めてください。これ見てから議論しようと。(笑い)

 小池 メッセージの伝え方なんか、ほんとに勉強になります。そんなこと考えていると、あんまり癒やされないけど(笑い)。次の作品もぜひ楽しみにしています。

 中津留 がんばってください。ほんとに一日も早く、安倍さんをやめさせてください。

 小池 わかりました。必ず、ご期待におこたえします。


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