2016年11月21日(月)
自民が年金カット法案Q&A
際限ない削減浮き彫り 若い世代も徹底的に抑制
今国会の焦点になっている「年金カット法案」(国民年金法等改定案)について自民党は、「年金改革法案に関するQ&A」を作成しました。高まる反対世論に「年金カット法案という批判がありますが? いいえ、ちがいます」などと言い訳に躍起になっていますが、その内容をみてみると―。 (深山直人)
「カット法案」は、物価が上がっても賃金が下がれば賃金に合わせて引き下げるなど年金改定ルールを見直す内容です。
Q&Aでは、「万一への備えであり、物価と賃金が上がっている状況では、年金は下がりません」と言い訳しています。
しかし、アベノミクスで物価は上がっても賃金は逆に下がっています。今年度は、物価指標がプラス0・8%に対し、賃金指標がマイナス0・2%となったため、年金改定は行われませんでした。
ところが、年金カット法案が通れば、今年度のような場合、賃金に合わせて引き下げられることになります。
年金を抑制する仕組み「マクロ経済スライド」も改悪し、実施できなかった抑制分を持ち越し、物価が上がった時、まとめて実施できるようになります。
物価と賃金がどう変わろうが、際限ない削減ができる悪魔の仕組みにほかなりません。
若い世代を直撃
Q&Aでは、「年金カット法案」を「将来年金確保法案」と呼び、「世代間の公平を確保し、若い世代の年金水準を確保します」と売り込んでいます。
しかし、「マクロ経済スライド」によって、若い世代ほど受け取る年金水準は下がる仕組みになっています。政府は「現役世代の手取り収入の50%を確保する」としていましたが、それは年金を受け取る最初だけで、あとは長生きするほど目減りし、40%程度まで落ち込みます。
その上、年金カット法案によって、受給世代だけでなく、若い世代も、徹底的に抑制された貧しい年金しか受け取れなくなってしまいます。「年金水準の確保」とは、貧しい年金水準を確保するということにすぎません。
増税と引き換え
Q&Aでは、「低年金・低所得者への配慮」として、「19年10月から、新たな福祉的給付(最大年6万円)をスタートします」と売り込んでいます。
しかし、「福祉的給付」はまだ実施も決まっていないうえに、年金生活者の生活を直撃する消費税10%と引き換えです。6万円の満額を受け取れる人も一部です。
低年金・低所得者への「配慮」を打ち出さざるをえないこと自身が、年金カット法案が重大な影響を及ぼすかを物語るものです。
いくらごまかしても際限のない年金削減を強いる年金カット法案の害悪は隠せません。