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2016年11月11日(金)

きょうの潮流

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 「小生は人に手紙をかく事と人から手紙をもらふ事が大すきである」―夏目漱石は門下生の森田草平宛ての手紙にこう書いています▼つまりは人が大好きで、相手のことを思うからこそ言葉になるのでしょう。やはり森田宛てに「君、弱い事をいってはいけない。僕も弱い男だが弱いなりに死ぬまでやるのである」と書いた手紙もあります▼没後100年の現在、残っている漱石の手紙は2500通余り。友人や弟子への励ましから就職の世話、読者の手紙への返事、行政への抗議文、『吾輩は猫である』のモデルとなった飼い猫の死亡通知まで▼東京・駒場の日本近代文学館で開催中の「漱石―絵はがきの小宇宙」では、漱石に届けられたさまざまな絵はがきが展示され、漱石をとりまく人々の思いが鮮やかに立ち上ってきます▼エンゲルスの肖像画の「平民社絵端書(えはがき)」は社会主義者の堺利彦から。家族を相手に3夜続けて『猫』の朗読会を開いた、とあります。門下生の野間真綱(まさつな)は、漱石の家で接した猫が死んだことを悼み、「萩(はぎ)の枝(え)にビール注いで手向けけり」の句を添えた、諏訪湖のモノクロ写真のはがきを送っています。胃潰瘍で吐血し病床にあった漱石の元には、美しい花々の絵はがきが外界の空気を運んできました▼漱石は講演「私の個人主義」で「自分の自由を愛すると共に他の自由を尊敬する」「他の存在を尊敬すると同時に自分の存在を尊敬する」と語っています。たくさんの手紙のやりとりも、その思想の結実かもしれません。


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