2016年10月3日(月)
安倍政権が狙う福祉用具自己負担
反対の声 次々
意見書 24府県含む167議会
安倍晋三内閣が、要支援1、2と要介護1、2の人が受けている介護ベッドや車いすなどの福祉用具レンタルを、「原則自己負担」にしようとしていることに、利用者や事業者から次々と反対の声が上がっています。
署名22万人
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福祉用具レンタルの自己負担化に反対する署名は約22万人にのぼり、24府県議会と143市町議会で反対の意見書が採択され、引き続き広がっています。
署名は、利用者や事業者らでつくる「福祉用具国民会議」が呼びかけたもの。福祉用具を使うことで「生活の幅が広がり、社会参加も可能になっている」と強調し、安倍首相が掲げる「介護離職ゼロの実現」にも貢献できるとして、すべて保険給付でサービスが受けられる現行制度の維持を求めています。
地方議会の意見書も「重度化を防ぎ(中略)社会生活の維持につながっている」(京都府議会)と指摘。保険給付を外すと「かえって保険給付の増大を招き、介護人材の不足に拍車をかける」(岐阜県議会)と強調しています。
安倍内閣は、自宅に手すりをつけるなどの住宅改修についても自己負担化を狙っており、「自立支援に逆行する」と批判が高まっています。
生活援助カットにも
訪問・通所介護を要支援1、2の保険給付から外したのに続いて、要介護1、2の人が受ける生活援助を保険給付から外すことについても反対の声が広がっています。
東京都内では、日本ホームヘルパー協会東京支部などの介護保険事業者や利用者団体など19団体が9月、要介護1、2の保険給付削減・負担拡大などに反対する要望書を政府に提出しました。
介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成する介護支援計画(ケアプラン)の有料化についても、日本介護支援専門員協会が取り組む反対署名が22万人分寄せられています。
福祉用具 保険給付制度維持を
介護保険法では、福祉用具を「要介護者等の日常生活の自立を助けるためのもの」だとして、車いす、介護ベッド、歩行器など13品目の貸与・購入費用を保険から給付しています。
政府は2006年4月の制度改悪で、要介護1と要支援1、2の人への車いすや介護ベッドの給付を制限しました。今回の見直しは、要支援から要介護2までの給付を「原則自己負担」(一部補助)とするもの。福祉用具国民会議は、「福祉用具レンタル利用者の40%から50%が利用できなくなる」と指摘しています。「自立支援」という制度の理念を踏みにじるものです。
福祉用具国民会議は、6月には東京都内で公開討論会を開き、軽度者への給付抑制に反対し、制度維持を求める署名を呼び掛けてきました。
運営委員を務める長谷川俊和さん(福祉用具会社)は「軽度者と言われる方々は不安定で一番状態が変わりやすい方々です。自立した生活を支える福祉用具を取り上げてしまうのは大問題」だと指摘。「介護ベッドを使っているから起き上がりトイレまで行くことができる人が、もし借りられなくなって布団の生活になれば、寝たきりになるなどもっと悪くなる可能性も十分想定できます」と話します。
日本福祉用具供給協会が利用者から聞き取った調査では、自己負担になれば、福祉用具の種類により約3割が代替としてへルパーを利用すると回答。散歩などの外出では「あきらめる」との回答が7割を超えるものもあり、介護・医療費の増大と介護人材不足に拍車をかけると指摘しています。
自己負担となれば、身体の状態が変化したり機器に不具合が出た場合、交換や整備などに柔軟に対応できなくなることも指摘されています。「例えばつえの先のゴムも業者が交換やメンテナンスをします。一度買ってしまうとなかなかメンテナンスがされず、使いづらいものを使うと症状が悪化することもある。レンタルというシステムであれば維持できます」(長谷川さん)
福祉用具の利用は家族や介護者側の負担軽減にもつながっています。
医療・介護ベッド安全普及協議会の介護労働者への聞き取り調査(3月公表)では「介護ベッドなどがあれば、身体的な負担だけでなく、精神的なストレスの軽減になる」との実態が報告されています。
長谷川さんは、「福祉用具は介護士や家族の負担軽減にとっても、福祉用具の必要性は今後も高いと思います。現行の制度を維持してほしい」と訴えています。(北野ひろみ)
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