2016年9月19日(月)
高江ヘリ着陸帯建設工事
沖縄「慰霊の日」 弾圧指示出した
安倍政権 「妨害者」と住民排除
沖縄県の米軍北部訓練場で日米両政府が進めるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設工事をめぐり、「暮らしと豊かな自然が破壊される」と座り込みなどの抗議行動を粘り強く続ける東村高江地区の住民などを「妨害者」と決めつけ、全国から動員した機動隊による暴力的排除など無法の限りを尽くす安倍政権。その指示文書は県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦を悼み、戦争につながる一切を受け入れないと誓う「慰霊の日」に出されていました。(山本眞直)
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高江での政府の強権的な弾圧は、参院選沖縄選挙区で野党統一候補の伊波洋一氏が自民現職閣僚の島尻安伊子候補に10万票の大差で勝利した翌日、7月11日早朝を皮切りに始まりました。▽高江のヘリパッド建設予定地への資材搬入▽予定地の住民の監視用テントに機動隊が大挙して検問を実施▽全国から動員された機動隊が県道を封鎖し、反対する住民を暴力的に排除▽沖縄防衛局が法的根拠を示さず県道沿いの住民のテントを撤去―。
いずれも法の拡大解釈や法的手続きのない無法・違法な行為です。現場には全国から集められたヘルメット、作業服姿の防衛省職員がピケを張るように対峙(たいじ)しています。
防衛省が文書
そのもとになったのが同省の6月23日付「防犯パトロール及び妨害活動に対する本省・地方防衛局職員の派遣について」という指示文書です。(7月21日付既報)
指示文書は、4月29日、うるま市で発生した元海兵隊員の米軍属による女性暴行殺人事件をきっかけに官邸主導で始めた米兵犯罪を未然に防ぐとして繁華街などを夜間巡回する「防犯パトロール」にかこつけて出されました。
「指示文書」の「妨害活動」とは何か―。同省は本紙の取材に、「米軍施設区域への業務上必要な人員や車両などの出入りをさまたげること」をあげ、米軍施設は「北部訓練場周辺」と回答しました。その理由に「北部訓練場のヘリコプター着陸帯の移設工事に関わる当局の業務量が大幅に増加することが予想されたから」としました。
高江のヘリパッド建設は、1996年の日米のSACO合意(沖縄に関する特別行動委員会)で持ち出されました。北部訓練場の北側の返還を条件に南側の高江地区に7カ所(最終的には6カ所)を新たに建設することに合意。しかし住民の反対で2007年着工、09年完成という計画が2カ所のみの完成で、残り4カ所は着工の見通しすら立ちませんでした。業を煮やした米軍から「早く」と迫られた安倍政権が「来年(17年)3月完成」を打ち出したからです。
参列しながら
「指示文書」は、6月23日の「慰霊の日」(県条例で休日)に出されました。その日、糸満市で開かれた全戦没者追悼式で翁長県知事や県遺族連合会長などは異口同音に「この悲惨な戦争の体験こそが、平和を希求する沖縄の心の原点」とし、辺野古への新基地建設など「戦争につながる新たな基地建設に断固反対する」との強い思いを表明しました。
追悼式には安倍首相、中谷元防衛相=当時=が参列しながらこの日、防衛省は県民を「妨害者」として排除するための指示文書を出したのです。