2016年9月4日(日)
視覚障害者と駅の安全
ホームは“綱渡り”
可動柵 整備加速を
駅員の配置もっと
視覚障害があり盲導犬を連れて歩いていた男性が、東京の地下鉄駅ホームから転落し電車にはねられ死亡した事故が発生し、駅の安全対策が注目されています。(岩井亜紀)
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「目が見えなくても、見える人と同じように安心して歩ける社会であるべきでないか」。東京視覚障害者協会(東視協)の山城完治さんは、こう話します。点字ブロックの敷設は進んでいますが、「点字ブロックは視覚障害者にとってあくまでも“道案内”です。これで安全は担保できない」と強調します。
「駅ホームの歩行は“綱渡り”と同じようなもの。公共交通機関の利用で常に命の危険と背中合わせなのはおかしい。可動式ホーム柵の設置を企業任せにせず、政府も対策を取ってほしい」
東視協の調査(1994年)で、視覚障害者の半数、全盲の場合は3人に2人が駅ホームからの転落経験があります。日本盲人会連合が2011年に行った調査でも、252人中約4割の92人が転落したことがあると回答。151人が「転落しそうになった」と答えています。
視覚障害者の転落死事故が起きるたび、視覚障害者でつくる団体は、国土交通省や関係鉄道事業者にホーム柵設置を要請。同省なども、ホーム柵は「視覚障害者の転落を防止するための整備として非常に効果が高く、その整備を進めていくことが重要」だとしています。
全国に約9500ある駅のうち、ホーム柵が設置されているのは665駅、約7%。10年3月末時点の318駅からは倍増しています。
一方、ホームからの転落件数は、09年度に2442件だったものが、14年度には3673件になり1・5倍増。このうち視覚障害者の転落件数は、38件から80件へと倍増しています。
ホーム柵設置の駅が増えても、ホームからの転落件数も増加傾向にあることから、安全策が万全でないことは明らかです。
ところが、同省が15年2月に策定した「交通政策基本計画(14〜20年度)」では、20年度までの目標駅数が「約800駅」にとどまっています。
「目標800駅は、ずいぶん少ないですね」と山城さん。
「この計画は進めつつ、整備を加速してほしい。バリアフリー化が進む一方で、駅員の配置が縮小されている傾向も見逃せません。駅を利用して命が脅かされるということは、視覚障害者の基本的人権が守られていない状態です。しっかりした安全対策が不可欠です」と強調します。
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