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2016年6月29日(水)

発表遅れ“お蔵入り”も

文化庁戦争遺跡調査 沖縄戦の評価めぐり

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 文化庁が実施してきた、幕末から太平洋戦争終結までの全国に残る軍事遺跡の調査報告書が、2008年度に公表が予定されていながら、沖縄戦関連の評価、記述をめぐって現在も発表のめどがたっていないことが戦跡保存研究者と文化庁への取材で分かりました。(山本眞直)


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沖縄戦の戦争遺跡として保存されている「集団自決跡地」(渡嘉敷村指定文化財)=沖縄県立埋蔵文化財センターの「沖縄県の戦争遺跡」から

 大幅に遅れているのは文化庁が取り組む、近代遺跡調査の一つ、「近代遺跡調査9政治軍事」。

 調査は、1996年の原爆ドーム世界遺産登録を契機に戦争遺跡の文化財指定が拡大され、98年からの文化庁の近代遺跡全国調査に「政治・軍事」分野が入りました。

08年の予定が

 文化庁は沖縄県の南風原陸軍病院壕(ごう)、旧海軍司令部跡など全国の軍事遺跡50カ所を詳細調査の対象に選定しました。

 同時に29都道府県の戦争遺跡についても調査が必要と判断。建築史、歴史分野の研究者、専門家に遺跡の由来や文化的価値、保存状況についての調査を依頼、報告書にまとめるとしてきました。

 沖縄では県民を巻き込んだ唯一の地上戦、沖縄戦の実相を踏まえた「沖縄の軍事遺跡」のテーマで池田栄史琉球大学教授(考古学)らが調査、執筆しました。

 ところが08年当時、戦争遺跡保存関係者などでつくる「戦争遺跡保存全国ネットワーク」が文化庁の担当者に公表の見通しを問い合わせた際、返ってきたのが「350ページ分そろっているが上からストップがかかっている」という回答でした。

 池田教授は「発表が遅れているのは国の刊行物として、国際的な影響など政治レベルの判断、議論があるようだ」としています。

 本紙の取材に同庁記念物課は、現在も「沖縄戦は微妙で、公表の見通しはたっていない」こと、沖縄戦の評価、記述が“公表見送り”の主な要因になっていることを事実上、認めました。

政権の意向も

 沖縄戦問題をめぐっては06年に安倍政権による高校日本史教科書検定で「日本軍による集団自決の強制」を削除、12年には自民、公明党が支える仲井真県政が旧第32軍の首里司令部壕説明板から「慰安婦」「住民虐殺」の記述を削除しました。

 さらに15年6月には仲里利信衆院議員の質問主意書への答弁で「集団自決が軍による住民への直接的な強制を示す根拠は確認できなかった」として検定撤回はしないとの閣議決定をしました。

 全国ネットワークの十菱駿武共同代表はこう指摘します。「文化庁の公表先送り、事実上の“お蔵入り”が沖縄戦の実相をゆがめようとしている安倍政権の意向を受けた判断とすれば許されない。早期に公表すべきだ」


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