2016年4月19日(火)
きょうの潮流
経済大国であり格差大国」でもある米国で最低賃金引き上げの動きが急ピッチです。ニューヨーク、カリフォルニア両州では4日、最賃の時給を15ドル(約1600円)に引き上げることを決定。世界各国でも引き上げ求め「同時行動」が実施されました▼米国での最賃導入の草創期に、経済学者の間でくっきりとした主張の違いがありました。伊東光晴京都大学名誉教授が近刊の『ガルブレイス アメリカ資本主義との格闘』(岩波新書)で紹介しています▼サービス業、個人企業などに従事する労働者の「低賃金を引き上げるには最低賃金制の導入と、その引き上げが必要」というのがガルブレイスの主張。これと対立したのが「アメリカの新古典派」。経済学教科書では「均衡賃金を歪(ゆが)め資源配分を乱す」と、最低賃金制を否定していました。鋭い対立でした▼伊東氏は、「20世紀後半のアメリカを代表する経済学者」として、ガルブレイスの理論を紹介し、「経済的弱者を守る知識人の闘い」が最賃問題にも表れていることを述べています▼企業や富裕層による税逃れのための租税回避地利用。この規制は緒についたばかりですが、「自由な活動を妨げる」という主張に対抗し、過度の節税策への国際ルールづくりは始まっています▼日本でも、格差をただすことが課題で、最賃問題は熱い論点。「今すぐ1000円とし、1500円をめざす」との日本共産党の政策は、経済民主主義を確立する改革の一つです。公正な社会を目指す攻防は続きます。