2016年2月16日(火)
きょうの潮流
もし空を飛べたら―。そんな思いをめぐらせながら、わくわくした経験はだれしもあることでしょう。実はこの人もそう。スキー女子ジャンプの高梨沙羅選手(19)です。「やっぱり鳥のように飛べるのが楽しくて」。小学校2年生でジャンプを始め、とりこになった理由です▼今季、ワールドカップ(W杯)14戦で10連勝を含む11勝。ここにきて少し足踏みしていますが、今週末にも2季ぶりの個人総合優勝が決まるかもしれません▼17歳で臨んだ2年前のソチ五輪。金メダルを期待される重圧の中、4位に終わりました。涙をこらえ「五輪に戻ってこられるよう、もっとレベルアップしたい」とけなげに語る姿がありました。その悔しさもいまにつながっているのでしょう▼今季、自身のジャンプを評する言葉に驚きました。「男子のジャンプを見て圧倒される。男子のレベルには達していない」。その目指すところは、高いジャンプ台のはるか上にあるようです▼忙しい競技生活といっても、学業をおろそかにしているわけではありません。日本体育大学の学生として、シーズン中、授業に出られないときはインターネットで受講、試合前日の夜も机に向かう姿があるのだそうです▼長野五輪金メダリストの原田雅彦さんはいいます。「ジャンプは風などの運、不運に左右され、自分ではどうしようもないことがある。だからジャンプは自分とのたたかい」。小さな体で描く成長曲線。自身と向き合い、たたかい続けている証しがそこにあります。