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2015年11月11日(水)

きょうの潮流

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 かつて藤沢周平は、小説を書くということをこう表現しました。「人間の根底にあるものに問いかけ、人間とはこういうものかと、仮りに答えを出す作業であろう」。そして、そういう点では時代小説も現代小説を書く場合と少しも変わらぬと▼時代の流れとともに人の生き方や考え方は移り変わるが、人間の奥底にあるものは変わらない。そこに迫っていくことで過去から今につながるものをあぶり出す。時代小説ならではの魅力です▼「髪結い伊三次捕物余話」シリーズをはじめ、江戸市井の暮らしぶりを描いてきた宇江佐真理(うえざまり)さんが66歳で亡くなりました。貧しくとも人情や風情を失わずに生きる人々。その哀歓を細やかにつづった作品は幅広い層に読まれていました▼不易流行(ふえきりゅうこう)。世が進歩しても時代小説が廃れない理由を考えるとき、宇江佐さんはいつもこの言葉が浮かぶといいます。永遠に変わらないものと常に新しくなっていくもの。本紙のインタビューでは「時代小説を舞台に現代にも照射し、人間の普遍的な美徳をすくい取った小説を書きたい」と▼文は人なりを実践した藤沢周平の小説に心を打たれ、こういう書き方や内容なら自分も書けるかもしれないと浸りこんだ時代小説の世界。「表現方法として、いちばん気持ちに合っていた」▼日々の生活をいとおしみ、家事や育児と背中合わせで作家業に励んできた宇江佐さん。乳がんになっても書きつづけた彼女のメッセージは明快です。“幸せは普通の暮らしの中にこそあるのだ”


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