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2015年7月12日(日)

きょうの潮流

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 漫画家の水木しげるさん(93)が出征前につづった手記が5月末、家族によって発見され、『新潮』8月号に発表されました。20歳の時、1942年10月から11月にかけて執筆したと推測されます▼日本が太平洋戦争に突入し、全国民が戦争に巻き込まれていった時代。成年男子は徴兵制によって、いや応なく戦地に送られました▼「将来は語れない時代だ。毎日五萬(まん)も十萬も戦死する時代だ」「今は考へる事すらゆるされない時代だ。画家だらうと哲学者だらうと文学者だらうと労働者だらうと、土色一色にぬられて死場へ送られる時代だ。人を一塊の土くれにする時代だ」▼画家を志し、芸術の美とは何かを追求して哲学書を読みふけり、聖書や仏教書に生きる意味を問う青年の姿が浮かび上がります。しかし輝かしいはずの青春の日々は、戦死の恐怖に塗りこめられていました▼「こんな所で自己にとどまるのは死よりつらい」。どうせもうすぐ死ぬのなら、自己を捨て、何も考えずに暴力と権力に身を任せてしまおうと自暴自棄になる心情も記されます。そして翌43年、ニューギニア戦線ラバウルへ。飢餓とマラリアに苦しみ、爆撃にさらされ、左腕を負傷し切断します▼地獄を生き抜いて、戦争体験を『総員玉砕せよ!』『敗走記』『ラバウル戦記』に結実させた水木さん。その人生を支え続けたに違いない思いが、手記にあります。「私の心の底には絵が救つてくれるかもしれないと言ふ心が常にある。私には本当の絶望と言ふものはない」


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