2014年6月22日(日)
きょうの潮流
中国、韓国への反感をあおる本が書店にあふれています。「嫌中」「呆韓」「恥韓」…罵詈雑言(ばりぞうごん)としか言いようがありませんが、売れ行きはいいそうです▼この風潮に一石を投じようと、出版社の河出書房新社が全国の書店に選書フェア「今、この国を考える〜『嫌』でもなく『呆』でもなく」を呼び掛けました。日本が抱える社会問題を扱った書籍が対象。賛同した全国約150の書店で順次開催中です▼「嫌中韓」本のなかには、日本による侵略戦争を否定するものも少なくありません。東京都内の大学で朝鮮近現代史を講義している教員が、学生の間に中国、韓国への反感や蔑視が広がっていると懸念していました▼「侵略戦争や『慰安婦』の実態を知らない学生が多い。『嫌中韓』本の内容を簡単に信じ込む。自分の国を悪く言われるのは嫌だという素朴な感情があるから」▼安倍政権が20日、旧日本軍による「慰安婦」への関与や強制性を認めた河野談話の検証結果を発表しました。結果は「内容が妥当なものであると判断した」。河野談話を見直させて歴史の真実を否定しようとする勢力への痛打です▼「嫌中韓」本に熱中する学生や若者の多くは、日本に不都合な事実を中韓の「謀略宣伝」だと信じ込んでいるようです。本が売れる背景には、経済停滞で将来を展望できない閉そく感があるといいます。選書フェアを企画した担当者は「未来を想像するために、過去を振り返り、今現在そこにある問題を考える」ことを訴えています。