2013年6月16日(日)
米欧版TPP
映像除き本格交渉へ
EU 「例外」認める
【パリ=浅田信幸】欧州連合(EU)は14日、ルクセンブルクで貿易相会議を開き、米国との間で環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の本格交渉を開始することを合意しました。最大の焦点であった「文化的例外」については、将来の米欧協定に「(映像など)視聴覚メディアは含まれない」と交渉委任事項に明記しました。
TTIPは日本で問題になっているTPP(環太平洋連携協定)の米欧版にあたります。全分野の貿易・投資の自由化を意図し、今年2月に交渉開始を米国とEUの間で合意していました。
EU側で問題になった「文化的例外」は、文化は一般的な商品とは異なり自由貿易の対象にならず、国家による特別な補助を認める立場。特にフランスが強く主張し、映画やDVDなど視聴覚メディアを交渉の対象から除外しなければ交渉開始に「拒否権」を行使するとの姿勢を明らかにしていました。
また映画・文化界からも世界的に知られた映画監督のコスタ・ガブラス氏、ケン・ローチ氏、スティーブン・スピルバーグ氏らをはじめ7000人が「文化的例外」に支持を表明していました。
EUの執行機関である欧州委員会やドイツ、イギリスなどは、初めから特定分野を除外すれば、米国側も同じ対応をして、有利な交渉はできなくなると主張。14日の貿易相会議は、フランスの主張を受け入れた決着までに13時間もかかりました。
17日から北アイルランドで開かれる主要8カ国首脳会議(G8)で、議長を務めるキャメロン英首相とオバマ米大統領がTTIP本格交渉開始を宣言する予定です。
環大西洋貿易投資連携協定(TTIP) 米国と欧州連合(加盟27カ国)の間で貿易と投資の全分野で自由化を図る協定。通商ルールの世界標準を米欧主導で確定することが狙いとされます。欧州諸国から協定が国民の生活や文化に打撃を与えるとの懸念の声が出ています。フランスは文化を保護する公的制度・補助を協定の交渉対象外にするという考え、「文化的例外」を強く要求しています。