「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2013年5月26日(日)

きょうの潮流

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 新緑めぶく季節から黄金色に実った麦の収穫や田植えをむかえ、梅雨をはさんで夏の盛りへと至る。四季のある国の趣は、人間の営みとともに移ろいます▼そんな日本の折々の風景が東京・世田谷にある向井潤吉アトリエ館で楽しめます。開館20周年の記念展で、いまは春夏の作品が飾られています。早春の武蔵野や遅春の東北や中部地方、眼前にひろがる緑野を巧みな筆致で描いた絵にひきこまれていきます▼「民家の向井」と呼ばれた洋画家は戦後、40年以上にわたって2000点もの民家のある風景を残しました。ほとんどは木々や野山に溶けこんだ、かやぶき屋根の古い家。全国をめぐり美しい自然や人間の平凡な暮らしを描きつづけました▼契機は従軍画家としての体験です。徹底した現場主義だった向井さんは、日中戦争が始まるとみずから戦場に赴きます。しかし、初めて描いた戦争記録画「突撃」が批判されます。「日本の戦争は聖戦である。あんな殺気だった表情をしているはずがない」▼肌で感じた戦争の狂気や理不尽さ。強大な暴力によって人間が引き裂かれていく悲惨さ。それを味わった画家として、敗戦の喪失感や荒廃のなかで何を描いていくか。その課題に直面した向井さんは、対極にあるものを選んだのです▼時代の波や開発によって、各地に根づいてきた風景や民家は姿を変えています。しかし、平和の尊さを身をもって知った一人の画家が描き継いだ、日本に息づく自然と人々の営みまで失いたくはありません。


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって