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2013年5月2日(木)

主張

B787運航再開

やはり不安は拭い去れない

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 重大トラブルの続発で今年1月から全世界で運航停止になっていた米ボーイング社の最新鋭旅客機B787型機の運航再開を、米国と日本の航空行政当局が承認しました。ボ社の示した改善方法で対策がとられたと判断したのです。トラブルの根本原因は依然として不明のままだというのに、あまりに拙速なゴーサインです。全日空と日本航空は改修作業をおこない6月からの営業運航再開をめざしていますが、とても不安を拭い去ることはできません。

3カ月たっても原因不明

 B787型機は、米国・ボストン空港で日航機がバッテリー出火したのに続き、山口・宇部空港を離陸した全日空機もバッテリー出火により香川・高松空港に緊急着陸する事故などを起こしました。1月に立て続けに起きたトラブルは、一つ間違えば人命にかかわる大惨事になりかねないものでした。

 事態を重くみた各国の航空当局は次々と運航停止を決め、全日空17機と日航7機をはじめ世界中の8社が保有しているB787型機約50機すべてが飛べなくなる異常事態となったのです。

 3カ月以上経過しましたが、米国と日本の運輸安全委員会などの調査はまだ続行しています。飛行機の翼などを操作するための電気を蓄えるバッテリーが過熱し制御できなくなる「熱暴走」が発生したことまでは分かりましたが、なぜ「熱暴走」したのかという肝心の原因の特定はできていません。

 最先端技術を集め「電気飛行機」といわれるB787型機にとってバッテリーは、まさに心臓部分です。飛行機の“命を支える心臓”が不調になったのに、その要因が分からないままでは、根本的な“治療”ができるはずがありません。

 ボ社のまとめた対策は、「熱暴走」が起きる可能性を約80項目にわたって「想定」し、それへの対処をまとめたものにとどまっています。バッテリー内にある電池を絶縁テープで巻くことや、電池と電池の間を仕切ることなどの対策も、「熱暴走」が起きたとしても、被害を拡大させないという「対症療法」です。発熱・発火の原因が分からないのに、あれこれ推定して対策を講じたといっても、とても万全の保証とはいえません。

 日本の国交省が独自に、バッテリーのサンプル調査実施などを全日空と日航に求めたこと自体、ボ社の対策だけでは不十分であることを裏付けるものです。

 バッテリーの出火の確率についてボ社は「1000万時間に1件」と想定していたのに、実際は6万時間にも満たない時間で2件も起きています。米国の運輸安全委では、バッテリーの開発段階で問題があった可能性も指摘されています。バッテリーの設計・製造段階まで踏み込んだ、根本的な検証こそが必要です。

安全は政府の責任で

 全日空と日航のB787型機は計24機と、世界の半数近くを占めます。それだけに日本の航空行政当局は、同機の安全確保に特別に重い責任があります。ボ社と米国の航空行政当局の判断を追認する姿勢を改め、日本政府が責任をもって、安全と安心を確保する仕組みに転換すべきです。

 運航再開の見直しを検討することも必要です。安全を置き去りにした再開は、空の足への信頼を失わせる結果になりかねません。


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