2013年2月23日(土)
主張
安倍首相訪米
「沖縄」の声を伝えたのか
政権発足から約2カ月、ようやく訪米した安倍晋三首相は日本時間で23日未明、オバマ米大統領と会談します。「日米同盟の絆」を確認したいという安倍首相が、沖縄の米軍基地問題や環太平洋連携協定(TPP)への参加問題、原発依存の継続などで重荷を背負い込むことにならないか懸念されます。会談の結果は改めて論じるとして、問題は「主張する外交」がうたい文句の安倍首相に、国民の悲痛な声をアメリカに伝える立場があるのかです。とりわけ米軍基地に苦しめられる沖縄県民の声を届けるのは首相の義務であるはずです。
基地あるがゆえの苦しみ
「沖縄は忘れない、あの日の空を」―。首脳会談直前の東京で、ようやく劇場公開の最終日に間にあって記者が見た、沖縄で54年前起きた宮森小学校(現うるま市)への米軍ジェット戦闘機の墜落事件をドラマ化した映画「ひまわり」のサブタイトルです。墜落事故では11人の子どもたちと6人の住民の命が奪われ、全身にやけどを負った1人の子どもも後遺症で亡くなりました。事故を「忘れない」という思いは、米軍普天間基地を抱える宜野湾市で起きた米軍輸送ヘリ墜落事故や度重なる米兵犯罪など、今日の沖縄の現実に重なるものです。
沖縄県民は戦後67年もたつというのに、基地あるがゆえの苦しみを強いられています。日本全体の面積のわずか0・6%しかない沖縄に、国内の米軍専用基地の74%が集中し、たえまない事故・犯罪などで県民の苦しみは我慢の限界を超えています。沖縄県民が米軍基地の撤去を求め行動するのは当然です。
安倍首相は普天間基地の「固定化はあってはならない」という言い分で名護市辺野古に米軍の「新基地」建設、基地の「移設」を明言しています。普天間基地は米国防長官ですら「世界一危険」といわざるをえなかった基地です。そんな危険な基地を受け入れるところは県内のどこにもありません。
なぜ「移設」ではなく「撤去」を堂々とアメリカに要求しないのか。日米両政府が辺野古「移設」をもちだしてから17年たちますが、県民の反対で「新基地」建設のための杭(くい)一本打たせていないのをみても普天間基地の即時閉鎖・撤去以外に道がないのは明らかです。
日米両政府はこうした県民の声に応えるどころか、普天間基地への新型輸送機オスプレイの配備を強行し、わが物顔で沖縄の空を飛び回らせています。欠陥機オスプレイが日米合意にも反する危険な飛行をくりかえしているのに、日本政府は抗議一つしていません。沖縄県内41市町村のすべての首長と議会の議長、県議会議員など144人が1月末安倍首相にオスプレイ配備の即時撤回を要求しました。安倍首相が日本の首相なら、その声ぐらい伝えるべきです。
いまだ占領地のように
「米軍はいまだ占領地でもあるがごとく傍若無人に振る舞っている」「日本のあり方が問われている」―首長や議長などが首相に手渡した「建白書」の文面です。安倍首相が、せっかく訪米してもオバマ大統領に沖縄の声を伝えないなら、首相の資格が問われます。
沖縄はあきらめない、たたかい続ける―映画「ひまわり」のメッセージを首相は知るべきです。