2013年1月18日(金)
米大統領 銃犯罪抑制策を発表
購入者の身元調査 攻撃用販売禁止
【ワシントン=山崎伸治】オバマ米大統領は16日、同政権の銃規制に関する特別チーム責任者のバイデン副大統領の提言を受けた銃犯罪抑制策をホワイトハウスで発表しました。そのうち銃購入者の身元調査に関する情報を政府機関が共有することなど23項目を大統領令として公布。さらに攻撃用武器の販売禁止などについては、議会に対し、実現に向けた協力を求めました。
オバマ氏は、銃規制を求める手紙を寄せた4人の小学生とともに発表に臨み、「子どもを安全にしておくことが、社会の第一の任務だ」と表明。昨年12月に東部コネティカット州ニュータウンの小学校で起きた銃乱射事件後、1カ月の間に900人が銃で死亡していることも挙げ、「これ以上放置はできない」と強調しました。
大統領令の23項目には、議会の承認がなくても行政機関としてできることが盛り込まれています。
一方、議会に対してオバマ氏は、(1)すべての銃購入者に対して身元調査を実施する(2)軍が使うような攻撃用武器を禁止し、装填(そうてん)できる弾丸を10発に制限する(3)法執行機関による銃規制活動を支援する―ことを挙げ、法制化に協力するよう求めました。
また憲法修正第2条を根拠に銃規制に反対する議論についてオバマ氏は、「国民が武器を保有し、携行する権利は尊重する」と表明。「銃を危険な人物の手に届かないようさらに努力すればニュータウンのような悲劇は減るということに、誰もが賛同するだろう」と述べ、今回の提案は「常識的な手だてだ」と強調しました。
憲法修正第2条 米国で個人による銃所有を容認する根拠とされている憲法の条項。その是非は議論が分かれています。「規律ある民兵団は、自由な国家の安全にとって必要であるから、国民が武器を保有し携行する権利は、侵してはならない」と定めています。
大統領令 米国で、行政機関とその職員が職務を遂行するのを援助するため大統領が発する命令。議会が定める法律ではありませんが、それに準じるものであり、完全な法的効力があります。
解説
世論背景に積極姿勢 オバマ氏
オバマ米大統領は16日の銃犯罪抑制策の発表で、ニュータウンの銃乱射事件を受けて銃規制を求める世論が強まるもと、規制に消極的な議会をけん制しながら、2期目を迎える同政権の積極姿勢をアピールしました。
米国ではこれまでも悲惨な銃乱射事件が繰り返され、そのたびに銃規制が問題になってきました。にもかかわらず、全米ライフル協会など“銃の保有は憲法上の権利だ”などと主張する勢力がその“政治力”を使って政府による有効な対策を封じてきました。
しかし、ニュータウンの事件は世論を一変。15日に発表された米紙ワシントン・ポストとABCテレビの合同世論調査結果では、殺傷能力が高い攻撃用武器の販売禁止を支持する人は58%に上り、88%が銃購入者の身元調査を強化することに賛成しています。
オバマ氏はこうした世論の変化をとらえ、行政府としてできることを明確にし、議会に対しても世論に応えるよう求めました。
下院で銃規制に消極的な野党・共和党が多数を占める現状では、オバマ氏の提案の具体化には困難が予想されます。しかし、ニュータウンの事件の被害者家族が新たな運動を始めるなど、これまでにない草の根からの働きかけがどう生きるか、注目されます。 (ワシントン=山崎伸治)