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2013年1月16日(水)

主張

銃社会アメリカ

「力による支配」の克服こそ

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 米国で銃を使った凶悪犯罪が頻発し、銃所持のあり方があらためて大問題になっています。コネティカット州の小学校で昨年12月に起きた乱射事件が全米に衝撃を与えました。犠牲者26人のうち20人が児童でした。

 それから1カ月。銃規制の強化は米政権にとって内政の重要課題に浮上しており、オバマ大統領は週内にも対策を明らかにするとみられます。しかし、社会的亀裂をもたらす問題を多く抱える米国でも、銃所持の問題は根深く、規制は容易に進みません。

乱射事件が契機に

 小学校乱射事件の波紋はさまざまです。家庭に眠る銃を回収しようとスーパーの金券と交換する運動がある一方で、規制強化を見越してか、銃の販売数が増えている地域もあると伝えられます。

 なかでも、規制強化を求める運動の高まりが注目されます。2年前に支持者との対話集会で銃撃され、奇跡的に回復を果たしたギフォーズ前下院議員が、規制強化をめざして圧力団体を立ち上げたことが大きく報じられました。

 オバマ大統領は乱射事件を受けて規制強化への積極姿勢を見せています。対策チームを率いるバイデン副大統領は、根強い反対のある議会を押し切ってでも規制を強化するとしています。規制が国民的関心事であるだけでなく、オバマ政権は銃規制に消極的だとする規制強化を求める諸団体からの批判に応えようともしています。

 ただ、規制といっても購入者の身元調査などが焦点で、半自動小銃など軍事用“兵器”の所持禁止さえ難しく、拳銃の禁止は視野にも入っていません。銃の所持を認める限り、より強力な武器を求める動きも絶えません。

 これほど多くの犠牲を重ねてもなお、米国でなぜ銃規制が難しいのでしょうか。銃所持を認めた米国憲法修正第2条を持ち出すまでもなく、銃は米社会に根付いた問題です。銃所持を正当化する立場からは、所持は個人の権利であり、規制は政府による不当な介入だとの主張があります。米国で個人と社会とをことさらに対立させる主張は、富裕層への課税強化や大企業規制への反対など広範な問題でも表れる傾向です。

 銃規制が難しい背景として、著名な経済学者のジェフリー・サックス氏は、米国はヨーロッパ人が先住民や奴隷を力ずくで支配してつくった「征服社会」だからだ、と米国の成り立ちを指摘します。

 規制強化の要求にオバマ政権がどう応えるかは、国際社会にとっても関心事です。米社会に根深い力への信奉は、ブッシュ前米政権が「対テロ戦争」として追求した一国覇権主義にも通じるものです。自らの武力を頼む米国の姿勢が、効果的なテロ対策に必要な国連憲章にもとづく国際社会の一致した取り組みを破壊したのです。

犠牲を生かす道

 銃規制は米社会のあり方を問い直すものです。個人が武装して自らを「守る」のか、それとも市民社会が武器を放棄した個人を「守る」のか、です。米社会が自らの歴史を乗り越え、社会の連帯を通じて問題を解決しようとするまで、銃規制問題に終わりはないのかもしれません。米社会が「力による支配」の論理の克服に向けて大きく歩み出すことこそ、尊い犠牲を生かす道です。


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