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2012年10月22日(月)

主張

EU首脳会議

統合深化の方向はみえるが

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 「ユーロはどうなるのか? ヨーロッパは?」―世界が注目する欧州の先行きに、多少の安心感は与えたようです。欧州連合(EU)首脳会議がユーロ圏の銀行監督の一元化を確認しました。欧州単一通貨ユーロによる通貨同盟から「銀行同盟」への前進です。

 財政・経済面での統合、さらに政治統合へと統合深化の長い道のりにも足を踏み出したかにみえます。危機の解決に当然の流れですが、矛盾も拡大しており、山積する問題の克服に構想力と知恵が必要です。EUと国民国家の政治指導者まかせではなく、広範な市民の参加が不可欠です。

銀行監督を一元化

 深刻な金融危機のなかで、銀行の抱える不良債権処理のために各国が資本注入すれば、財政が一段と悪化し、銀行の保有する国債がさらに値下がりする恐れがあります。この金融と財政の危機の悪循環を断つことが課題とされました。欧州中央銀行(ECB)による無制限の国債買い入れに加え、各国財政を経由せずに欧州安定メカニズム(ESM)から直接に資本注入する仕組みを実現するため、その前提として銀行監督を一元化するのが今回の措置です。

 首脳会議に先だって開かれた財務相会議では、あらゆる金融取引に課税する金融取引税がドイツやフランスなど11カ国で導入されることが固まりました。同税の導入は、銀行破綻のコストを銀行自身に負担させることにつながります。また、国民生活を損なう投機を規制し、実体経済を振り回す金融の肥大化を抑えるうえでも有効とされ、導入が世界的に求められています。

 ただ、これらでスペインなどの危機に幕が下りるかどうかは不透明です。国内に外国支援への反発を抱えるドイツのメルケル首相は渋々同意したものの、ESMからの資本注入は将来のことで、これまでの不良債権には適用されないとしました。支援を期待するスペインには寝耳に水の事態です。

 金融業に依存し自国銀行の競争力を強めたいイギリスは、金融取引税導入はもとより銀行監督の一元化にも反対し、EU脱退さえちらつかせています。

 重要なのが統合深化にあたっての基本的考え方です。統合を推進する政治指導者にも、グローバルな市場での競争力強化が必要であり「構造改革」を進めるべきだとの主張が広くあります。欧州各国では青年の就業率の引き上げが大きな課題ですが、雇用の確保と成長を掲げて、労働条件の改悪につながる労働力の「流動化」も強調されています。その流れは、欧州を席巻する緊縮政策と相まって、労働権や社会保障の基盤をもつ欧州型社会を掘り崩すものです。

市民の政治参加で

 統合深化が広範な欧州市民の支持を得るものとなるには、欧州型社会モデルを堅持した連帯を強めるとともに、労働者をはじめ広範な市民の政治参加をさらに強めることが不可欠です。

 EUが今年のノーベル平和賞を受賞するとのニュースに、戸惑いが広がりました。緊縮財政を強いられた国にある「経済戦争の仕掛人に平和賞とは!」との批判も理解できます。それでも、ここはEUが平和をめざす求心力を取り戻してほしいという願いを映すものとして見守りたいものです。


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