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2012年10月4日(木)

きょうの潮流

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 フランスの作曲家ドビュッシーは、一つの絵に魅了され、交響詩「海」を作りました。葛飾北斎の「神奈川沖浪裏(なみうら)」です▼かなたに望む富士山。舟をもてあそび、生き物のように荒れ狂う波。北斎の絵なくして、底知れない海の生命力を表すドビュッシーの名曲は生まれなかったかもしれません▼東京・渋谷のギャラリー「TOM」館長・村山治江さんは、海外の人々に頼まれていました。欧米で「ビッグウエーブ(大波)」とよばれる北斎画を目の見えない人も味わえる、本をつくって、と▼点字のように触って鑑賞する触察本です。触察本づくりで先を行く、フランスやイタリアの専門家と交流し始め6年。ことし、『手で見る北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」』ができ上がりました。「TOM」副館長の岩崎清さんらが、さまざまな分野の人の協力をえて完成させました▼生まれた時から目の見えない人は、色のない世界に生きます。大波も、触って形を知るだけでは、静止しています。色の濃淡や盛り上がっては落ちてゆく波の力動感を、どう伝える。岩崎さんたちは、あちこち工夫をこらしました▼「TOM」の名は、作家・演出家・画家、万能だった村山知義の絵の署名からとっています。彼の息子の亜土さんと治江さんの夫妻が、長男の次の一言に動かされて建てた美術館です。「ぼくたち盲人もロダンを見る権利がある」。『手で見る北斎』は、目の見えない人と見える人の壁を崩し、ともに名画を語りあえる社会への第一歩です。


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