2012年9月25日(火)
きょうの潮流
「家は人間の生きる拠(よ)り所」―。東京都美術館で催されている「Arts&Life・生きるための家」展(30日まで)を見て、いろいろ考えさせられました▼「生きるための家」というテーマで若手建築家から公募した、近未来の住まいの入選作を模型で展示しています。募集時期は昨年夏。当然ながら東日本大震災という重い現実を直視した作品が目を引きます▼家とはなにか、鋭く問いかける作品群です。冒頭に紹介した「生きる拠り所」について考察した作品は、説明文で家がいかに大切なものであるかを説き、道路を工夫することで津波に強い街づくりを提案しています▼新しい発想の仮設住宅の提案も。一刻も早く提供できることを考えた、折りたたみ式の住宅です。その作者が定義する仮設とは「失われてしまった生活と、これから再建される生活とをつなぐ住宅」▼震災から1年半を経た現実はどうでしょう。本紙が実施した「被災者300人実態調査」では、仮設住宅について「夏は暑く、冬は寒い」「狭くて壁が薄い」などの声が圧倒的でした。避難生活のストレスで心身を痛めつけられ、被災者の4割が体調不良を訴える異常事態▼新しい住まいへの見通しも暗い。住宅再建が困難と答えた人が76%にのぼります。生きる拠り所となる住まいの再建は、政治の大きな責任のはずです。生活や産業の再建に国の全面支援が引き続き必要と求める被災者が約9割。消費税を上げたり、政争にうつつを抜かしている場合ではないでしょう。