2012年9月2日(日)
主張
森本防衛相行脚
10月配備の“地ならし”やめよ
森本敏防衛相が先週末、米海兵隊が沖縄の普天間基地に配備を予定している新型輸送機オスプレイのモロッコでの墜落事故について説明するため、沖縄県と同機が陸揚げされている山口県を訪問しました。今週以降、アメリカ・フロリダでの墜落事故についても説明する段取りです。
森本氏がオスプレイの配備に反対している地元の声に耳を傾けず、あくまで10月からの配備を前提に行脚を重ねているのは問題です。“地ならし”のための訪問は住民を裏切るものです。
あくまで「人為的」ミスと
森本氏が今年4月のモロッコでのオスプレイの墜落事故について沖縄・山口両県で説明したのは、墜落事故は「人為的なミス」だということです。米軍の報告をうのみに機体には問題がなかったとするもので、墜落の危険性についても、騒音などの被害についても、住民の不安にまともにこたえるものではありません。「これでは安全が保証できない」と仲井真弘多沖縄県知事などからきびしい批判を突きつけられたのは当然です。
米軍の事故報告でも、それをもとにした防衛省の分析報告でも明らかになったのは、オスプレイはきわめて操縦が難しく、離着陸時や背後から風に吹かれたような場合、「人為的」なミスで事故を起こしやすいということです。その意味では「構造的」な欠陥は明らかなのに、それを「安全」だといって沖縄をはじめ全国に押し付けるのは国民の安全を守るべき政府の態度とはとてもいえません。
しかも見過ごせないのは、森本氏が事故の報告だけでなく、「今後の取り進め方」について説明するため訪問したことを隠していないことです。森本氏からは、10月といわれる配備の予定の見直しをアメリカに申し入れるとも、国民の反対を押し切って岩国基地に陸揚げしたオスプレイの撤去を申し入れるということばも出ません。事故原因の報告はあくまでも「10月配備」が前提です。
実際、森本氏が山口県を訪問したさい岩国基地に陸揚げしたままになっているオスプレイについて、自治体関係者などによる「体験搭乗」を提案しているのは重大です。短時間の遊覧飛行のような搭乗で、オスプレイの安全性が証明されるはずはありません。「体験搭乗」の提案は反発を封じ込めるためとしかいいようがありません。
森本氏の事故についての説明は、いかにも住民の不安に気を配っているように見せながら、結局のところ、オスプレイを予定通り10月に沖縄に配備するためです。アメリカに求められるまま、日程を消化しているといわれても仕方がないものです。これで反対が押さえ込めると考えているなら、それこそ大間違いです。
全国の力で配備の撤回を
オスプレイの配備が予定されている沖縄の県民や低空飛行訓練などが予定される全国各地の住民が反対しているのは、文字通り命と暮らしを守るためです。墜落事故や騒音で命が脅かされるのが明らかなのに、アメリカの要求だから配備を受け入れよといわれても、それなら日米軍事同盟を見直すべきだと返されるだけです。
9日には沖縄で大規模な県民大会も開かれます。全国からも行動を強めてオスプレイ配備を中止に追い込む大きなヤマ場です。