2012年8月29日(水)
主張
オスプレイ事故分析
「配備ありき」の作文はだめだ
防衛省は、米海兵隊が沖縄に配備を予定している最新型輸送機オスプレイのモロッコでの墜落事故について、「人的要因が大きい」とする分析評価報告書を公表しました。森本敏防衛相は29、30の両日、沖縄県とオスプレイが陸揚げされた米軍岩国基地がある山口県を訪れ、説明します。
防衛省の報告書は、先に米海兵隊が発表した事故報告書をうのみにしただけです。「配備ありき」の作文で、オスプレイを県民に押し付けるのは許されません。
米報告書をうのみ
オスプレイは開発段階から墜落事故をくりかえし、今年に入ってもアフリカのモロッコやアメリカ国内で墜落している危険な航空機です。米海兵隊は、モロッコでの墜落事故についての報告書の中で、事故はパイロットの「操縦ミス」としました。同時にオスプレイは操縦が難しく、マニュアルにも不備があったと認めました。
防衛省の事故分析評価報告書は米側報告書をうのみにして、墜落は経験の浅い副操縦士の操縦ミスが原因で「機体に不具合はない」としています。もともと開発にも携わってこなかった日本側が、わずかな期間で「分析」するなど、原因究明とは程遠いものです。
オスプレイは岩国基地で飛行テストなどを行った後、9月には沖縄に移動させ、10月から運用を開始することを予定しています。米海兵隊も日本の防衛省もこの計画を変えようとしていない以上、事故原因の調査や分析が「機体に問題はない」というものになるのは予想されたことです。
しかしこんな報告書で県民は納得させられません。ヘリ機能と固定翼機能をあわせもつ複雑な輸送機のオスプレイは、操縦が難しいだけでなく、構造的な欠陥があると米国の関係者がくりかえし指摘しています。通りいっぺんの調査や分析で「操縦ミス」と結論付けた報告書を信頼せよというのは無理な話です。
実際アメリカ国内では、オスプレイの配備の見直しや訓練中止が相次いでいます。ニューメキシコ州では安全性を懸念する住民の反対で米軍は飛行訓練そのものを中止しました。ハワイでもオスプレイがもたらす吹きおろしの風による環境や農業などへの悪影響や騒音被害を懸念する住民の反対で、空港で計画されていた飛行訓練を中止しています。日本でだけ、沖縄でだけ、オスプレイによる危険を受け入れよというのでは、県民・国民は納得しません。
オスプレイが配備されれば、普天間基地を基点に沖縄県内と日本各地を飛び回ります。沖縄県民と全国各地の住民の命を危険にさらすのは間違いありません。配備そのものをやめさせる以外に命と生活を守る道はありません。
安保廃棄の声つよめて
沖縄ではすべての自治体と広範な県民が配備に反対しており、9月9日には県民大会も予定されています。森本防衛相が地元を訪問するなら、自治体、住民の声を聞き、合意が得られない配備の中止をアメリカに要求すべきです。
国民がどんなに反対の声を上げても配備計画を変えないというのは、国民の命よりも米軍の利益を優先する許しがたい態度です。政府が日米安保条約があるからというのなら、安保廃棄の声をつよめることがいよいよ重要です。