2012年5月10日(木)
きょうの潮流
山で採ってきたワラビを、さっそく灰汁(あく)抜きしました。ところが、なんと、皮を残してどろどろに溶けてしまいました。どうやら、ワラビを浸す湯に重曹を入れ過ぎたようです▼ふと、『論語』の「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」が思い出されました。ある弟子が孔子に、同門の別の弟子2人のどちらが優れているか、と聞いた。切れ者の方の弟子だと答えると思いきや、孔子はいった。「過ぎたるは…」▼いまでは、もののたとえにも使われます。度が過ぎると、足りないありさまと同様よくない―。もっともワラビの灰汁抜きは、足りなければやり直せますが、度が過ぎれば取りかえしがつきません▼世の中には、逆に「及ばざる」がために取り返しのつかない出来事があまりにも多い。北アルプス白馬岳の付近で、6人の一行全員が亡くなりました。冬山用の装備をもたず、急に襲ってきた吹雪と寒さに力つきたようです。装備も天候の予測も十分にして、遭難を避けられなかったのでしょうか。残念でなりません▼関越自動車道で乗客7人が亡くなったバス事故では、政府の規制不足も問われます。バス運転手の1日最大「9時間運転」「670キロ走行」の基準です。労働者は「過労死を招く」と見直しを求め、総務省も「1日670キロ」を改めるよう勧告していました。政府が運転手や乗客の身になって耳を傾けていたら、事故は防げたかもしれないのです▼「過ぎたる」ぐらいの用心深さでいい。こと、いのちにかかわる事柄では。