2011年12月16日(金)
きょうの潮流
イタリア北部の、とある町の飲み屋さんに、値段の毎日変わるカクテルが登場しました。値段は、当日のドイツ・イタリアの国債利回りの差で決まります▼開きが大きいと値上げ、小さいと値下げです。信用力あるドイツ国債は、利回りが低くても買ってもらえます。財政難で信用の落ちたイタリアの方は、高くないとなかなか買い手がつきません▼利回りの格差が開けば、イタリアの信用がまた低下したとみなされます。カクテルを考え出した人が解説します。「イタリアの悪夢のおおもとを、心地よい夕べに変えるのさ」。酔い心地はいかが?▼市場で国債を売り買いする金融機関は、イタリアに圧力をかけます。財政赤字を減らして信用をよくしないと国債を買ってやらない、と。そこで政府は、おおわらわです。年金の受け取り年齢の引き上げ。増税…。同様の「財政再建」が、イタリアだけでなくユーロ圏の各国に広がります▼ドイツの元財務相がいいました。「市場ではなく国民が主人公だ」。国の主権者は国民なのに、「市場」が政治を左右する。「市場」の外国の金融機関が、イタリア政治にも影響をおよぼす。その金融機関は、投機に走る乱脈経営が破たんすると、税金で救われてきました▼「国民が主人公」なら財政にも、「市場」でもうける金融機関や大企業、大金持ちの応分の負担が欠かせません。いやなら、「市場」に振り回される深酔い資本主義に、もはや国民の生活を支える力はない、と認めることになるでしょう。