2011年11月26日(土)
きょうの潮流
「スポンサーのご好意により、このままナイター中継を続けます」。プロ野球のテレビ放送で、アナウンサーが興奮気味に語ります▼いい広告主だと喜んでいると、やっぱり試合の大詰めで、よく中継が打ち切られました。なにが「ご好意」だ。子どものころ、スポンサーは消えて、と思いました▼アメリカ軍の軍属が、日本で公務中に人を死なせたり命を脅かす障害を負わせたりした場合、日本の裁判所で裁けるよう、米政府が「好意的」に考えるようにする―。日米政府の合意を読み、穏やかではいられません▼野球中継とは訳が違う、尊い人命にかかわる犯罪です。なのにアメリカは、「好意」で日本の裁判を認めてやるのだ、認めない時もあるのだ、といわんばかり。ほかの犯罪の場合は、「好意」も払いません。ただ「考慮する」と、そっけない。強盗や女性暴行はどうなるのでしょう。米軍の占領者意識がちらつきます▼とはいえ、ようやくここまで厚い扉をこじ開けました。この5年間でも、米軍属の公務中の犯罪は1件も裁かれていないのですから。遺族や被害者、米軍犯罪に苦しむ沖縄はじめ全国の人々のたたかいが、日米政府を動かしました▼日米地位協定で米軍がまず裁判権をもつからと、引き下がってきた日本政府。「アメリカのご好意により」ではすまされません。環太平洋連携協定(TPP)でアメリカに対し交渉力を発揮するという政府にも、世間の目はきびしい。地位協定一つ変えられないでなにが交渉力か、と。