2011年11月9日(水)
きょうの潮流
「卒業」の季節にはまだ早い。しかし世の中には、学校以外にさまざまな卒業があります▼「たばこは卒業だよ」とか、「○○党支持は卒業だ」とか。さて、資本主義を卒業するとは? 漫画家の山田玲司さんが著した『資本主義卒業試験』の主人公は、やはり漫画家です▼夢かない人気作家だけれど、仕事に追われ、家庭は壊れ、自分を失い、気づけば「社会の奴隷」に。まわりを見渡せば、20代の多くが正社員にもなれない「貧乏時代」です。「成長を続けないと国が滅びる」というが、成長を続けると温暖化で地球が滅びる…▼どうしたらいいのやら。主人公は、答えを求めて経済学者を訪ねます。「資本主義はどういう形で次の社会へと卒業できるのか?」ときく試験を出し、学生を困らせた教授です。主人公は、研究室に集まった悩める人たちと、はっきりした答え探しの旅に出ます。ディズニーランドみたいな資本主義ランドへ▼そこにいました。「卒業した」と語る人が。会社の経営から退き、なるほど仕事からも解放された大金持ちです。投資でもうけ、「貧しい人にも援助している」と得意げです。彼の話を聞く主人公に、「資本主義で満たされるもの」として思い浮かぶのは、「動物的欲望と虚栄心」だけです▼搾取や競争で奪い合う快楽より分かち合う快楽を、と考える主人公。旅は続くようです。読後、思いました。私たちも「答えは社会主義」でおしまいにせず、より学び現実に働きかけ、たしかな答案にしあげる旅を、と。