2011年10月30日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
ことしも、近所の人にキノコをいただきました。富士山の中腹に分け入って採ってきた野生キノコです▼シメジの仲間たち。赤みをおびたハナイグチ。硬めのショウゲンジ。ことしは生育が遅れたようです。毎年、いまかいまかと待ちわび、育ち具合の偵察にでかけ、採りごろの時機を逃さずかけつけます▼「大山を知りつくす夫茸(つまたけ)狩りに」(米川みどり)。さっそく、きのこ汁にしていただきました。おわんに浮かぶ一つ一つに、採った人の満面の笑みが映し込まれているようにみえます。ごちそうさま▼生き物の中で、人間はとりわけキノコ好きらしい。しかし、キノコと同じ菌類がキノコを食べるそうです。その名もキノコナカセホコリ。アメーバのようになる粘菌の一種です。かと思えば、反対に、粘菌を食べるキノコもみつかっています。深い森に生きる菌類の世界は、まだまだ謎に包まれているようです▼歳時記から、もう一句。「月光に毒を貯へ(え)毒きのこ」(遠藤若狭男)。ことし、原発事故で放射能が多く降った山では、食べられるキノコも“毒キノコ”に変わってしまいました。キノコ類は、放射性セシウムを吸収しやすい▼原爆の爆発でできた雲は、「きのこ雲」とよばれます。いまわしい名前に使われたうえ、こんどは原発の放射能に侵されたキノコたちにとって、人間の仕業は迷惑千万でしょう。きょうは、「なくせ!原発 安心して住み続けられる福島を!」大集会です。さあ、きのこ汁の朝食をとり、福島へ行ってきます。