2011年10月29日(土)「しんぶん赤旗」
首相所信表明演説
「希望の種」はだれのため
「希望の種をまこう」「希望の芽を育てよう」「希望の花を咲かせよう」―。野田佳彦首相は28日の所信表明で、「希望」という言葉を9度も繰り返しました。
展望が見えない東日本大震災からの復興や原発災害、深刻化する円高不況を前にして、被災者・国民は希望を求めており、政治にはその願いに応える重大な責任があります。
しかし、所信表明で震災からの生活再建でも、原発事故の賠償や除染でも決意表明だけで中身は貧しいままでした。それどころか、復興に名を借りた庶民増税、環太平洋連携協定(TPP)の参加、米軍・沖縄普天間基地「移設」など、被災者・国民にとっては希望の種も芽も摘むようなことをやろうとしているのが実態です。
TPP問題では、アジア太平洋経済協力会議(APEC)までに参加表明しようとしているにもかかわらず、「できるだけ早期に結論を出す」と従来方針を繰り返すだけで、国民の批判や不安に一切こたえませんでした。
年内に引き上げ額などを決める消費税増税や、年内にも狙う原発再稼働については言葉さえなく、就任直後の所信表明で繰り返した「正心誠意」はどこにも見られません。
首相が国民に黙して語ろうとしなかった復興増税やTPP、普天間「移設」を求めているのは、財界・大企業とアメリカです。
復興増税によって財界は、15年間で12兆円もの法人税減税を手にし、TPP参加によって大もうけをあげることができます。
普天間基地「移設」ではアメリカが新基地をやすやすと手に入れることができるのです。
逆に国民は庶民増税を押し付けられ、TPP参加で国民生活のあらゆる分野で打撃を受けます。だれにとっての「希望の種」であるかは明瞭です。
「いま、私たち政治家の覚悟と器量が問われている」―野田首相は演説の最初と最後でこう繰り返し、財界とアメリカ直結の政治を進める決意を改めて強調しました。
民主党は「自民党政治を変える」といって政権に就いたのに、公約を投げ捨て、自公政権でさえできなかった企てに踏み出そうとしています。国民の願いに背く企てを続ける限り、国民との重大な矛盾は避けられません。暴走を許さず、政治を大本から変えることがいよいよ求められています。 (深山直人)
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