2011年10月29日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 フランスの画家ミレーの描いた「種まく人」は、みるからに力強い足取りで麦の種をまきます。一粒一粒の麦は、生きる糧を生みだす希望の種です▼野田首相の所信表明を聞きながら、ミレーの絵を思い出しました。首相は、仙台の詩人・大越桂さんの、「あったらいいなの種をまこう」とうたう詩を紹介し、よびかけました。「『希望の種』をまきましょう」▼種を「希望の芽」に育て、やがて「希望の花」を咲かせよう、という首相。被災地で懸命に希望の種を探し、まこうとしている人々の耳に、野田流「種まく人」のたとえは、どのように響いたでしょう▼首相は、所信表明でも、環太平洋連携協定(TPP)への参加に意欲満々です。岩手・宮城・福島の3県の被災地で、来年までに営農を再建できる人は3割にすぎない、といいます。そこへ、農産物の輸入を自由化するTPPの交渉話です。農家に、種まきすらかなわない日をもたらすかもしれないTPPなのに▼首相は、増税も未来の世代の重荷を減らす「希望の種」であるかのように語りました。しかし、大金持ちや金あまり大企業ならともかく、庶民増税は、人々の手の中のわずかな「希望の種」からさえ無情にしぼりとってゆきます▼ミレーは、「落ち穂拾い」も描きました。働いても十分な収穫を得られない貧しい農民や独り暮らしの女性が、畑に残された麦の落ち穂を拾う。野田首相の国づくりを許すなら、落ち穂拾いのように仕事と暮らしに困る人が、町でも村でもふえます。





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