2011年10月28日(金)「しんぶん赤旗」

主張

生活保護打ち切り

国の責任で不当な行政ただせ


 東日本大震災の被災者や東京電力福島第1原発の事故で被害を受けた人たちが、全国から寄せられた義援金や東京電力からの仮払い補償金を受け取ったとたん、生活保護が打ち切られる―。信じられないほど冷たい行政だと大きな社会問題になってきた被災地での生活保護打ち切りについて、日本弁護士連合会が各県や福祉事務所に照会していた調査がまとまりました。打ち切りの件数の多さとともに、地域による格差が明らかです。国民の平等を保障するためにも国による是正が求められます。

停止・廃止が458件にも

 日弁連が調査対象にしたのは青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県とそれぞれの県内の福祉事務所です。3月11日の大震災発生以前と8月1日を比較し、その間に生活保護を停止または廃止した世帯数と、その理由が義援金・仮払い補償金の受領としたものの数を調査しました。驚くことに、5県全体で4288世帯の停止・廃止のうち、1割を超す458世帯が義援金や仮払い補償金の受け取りを理由にしていたのです。

 全国から被災者に寄せられた義援金は、文字通り善意のお金で厚生労働省の通知でも全額を収入として認定すべきものではないとされています。原発事故の被害者に支払われた仮払いの補償金も、予想もしなかった被害を補償するもので本来収入と認定すべきではなく、厚労省でさえ「自立更生のためにあてられる額」は収入から除外するよう求めています。厚労省は大震災後、義援金などの一定額は使途にかかわらず収入から除外していいとも通知しています。

 生活保護は、病気などで満足な収入が得られない人を支えるために公的に支給することになっている、文字通り“命の綱”です。大震災や原発事故で深刻な被害を受けた人たちが、全国から寄せられた義援金や事故を起こした電力会社からの補償金を受け取ったからといって生活保護を打ち切られるのは、文字通り被災者を二重三重に苦しめる、あまりに冷たい仕打ちというほかありません。

 日弁連の調査で明らかになった重大な問題は、厚労省の通知はあってもその扱いが各福祉事務所でばらばらなため、地域によって大きな格差が生まれていることです。とくに最初に問題が表面化した福島県南相馬市では義援金や仮払い補償金の受領を理由にした打ち切りが233世帯と、全体の半分以上を占める突出ぶりです。半面、宮城県気仙沼市や岩手県陸前高田市のように、死亡や転出などで打ち切った例はあるが、義援金などの受け取りによる打ち切りはほとんど出ていない地域もあります。

法の下の平等のために

 本来国民は憲法で「法の下の平等」が保障されています。生活保護の制度があり、厚労省が義援金などは収入に認定しないと通知していても、その取り扱いがばらばらなため地域ごとに格差がでているのは問題です。南相馬市などの事例は直ちに是正が求められるものですが、そのためにも自治体に対策をまかせるのではなく、国が責任を持って趣旨を徹底し、異常をただすことが必要です。

 ことは国民の生活と権利にかかわる重大な問題です。生活保護の不当な打ち切りをやめるとともに、被災者の生活と生業の再建に政府は全力をつくすべきです。





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