2011年10月27日(木)「しんぶん赤旗」

米国防長官アジア歴訪

「太平洋 兵力強化続ける」


 21〜28日の日程でインドネシア、日本、韓国歴訪を続けているパネッタ米国防長官。米国は「太平洋国家」であると強調し、アジア太平洋地域の兵力を維持・強化する考えを主張しました。米議会から出されている軍事費削減要求に対する米軍や同盟国の“懸念”の打ち消しに躍起になっています。


 「空母の配備見直しや兵力の削減を検討しているのですか?」

 24日夜、東京・米空軍横田基地に降り立ったパネッタ長官は、米兵や自衛隊員250人が参加した対話集会でこう問われました。

 パネッタ長官は「国防総省やホワイトハウスで検討しているのは事実」と認めた上で、こう答えています。「米国は太平洋国家であり、この地域へのプレゼンスを維持し、兵力投入を続ける」「(太平洋地域における)兵力を維持するだけでなく、強化し続ける」

軍事費は重荷に

 25日の野田佳彦首相らとの会談でも、「米国は太平洋国家」と繰り返し述べていました。そもそも、パネッタ長官は、今回の歴訪の目的は「米国は21世紀においても太平洋地域に強固な兵力を維持するというメッセージを伝える」ことだと指摘しています(21日の会見)。

 中国の台頭を念頭に、アジア太平洋地域を戦略的に重視する方針を打ち出したオバマ政権ですが、深刻な財政難やイラク・アフガン戦費の膨張により、巨額の軍事費維持が重荷になっています。

 米議会からは軍事費の大幅削減を求められ、国防総省は在外兵力の「戦略的見直し」を余儀なくされています。パネッタ長官が「兵力の維持・強化」を繰り返せば繰り返すほど、逆に深刻な状況がうかがえます。

「辺野古」で圧力

 米国防総省が兵力強化を狙っているのが米領グアムです。現時点での常駐兵力は空軍の爆撃機部隊だけですが、在沖縄海兵隊の移転を契機に、4軍がそろった一大拠点にする構想です。

 しかし、米議会は、グアム増強で当初計画の4倍以上かかることや、「(グアム移転の条件である)普天間基地の“移設”が進展していない」ことを理由に移転経費の計上を却下。日本に対する「辺野古移設」圧力を強め、25日のパネッタ長官と野田佳彦首相らとの会談で「日米合意の履行」が再確認されたのも、このような事情からです。

 一方、日本側も“不満”を表明しました。

 一川保夫防衛相は25日午前の記者会見で「日本も合意を履行する責任があるが、米側も責任がある。グアム移転の予算執行について進捗(しんちょく)を要請したい」と述べました。

 2年前、米軍再編の「見直し」を表明していた民主党政権。今や、「辺野古への新基地建設反対」という沖縄県民の総意を無視して米国の「ご用聞き」になったばかりか、苦境に陥っている米国の背中を押すまでに変質しました。

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