2011年10月25日(火)「しんぶん赤旗」

「安全神話」が生んだ事故

東電手順書で明らかに

原因解明・全原発点検を


 東京電力福島第1原発1号機の「事故時運転操作手順書」の内容の一部がようやく明らかになりました。

 手順書は、事故原因の解明に不可欠なものですが、東電が開示を拒んできたために、闇に包まれていました。

 政府や電力会社はこれまで、炉心の核燃料が損傷するような過酷事故(シビアアクシデント)について、「わが国では起こりえない」などとして対策を怠ってきました。過酷事故に至る状況を想定した対策「アクシデントマネジメント」は、1992年の指針策定以来見直されず、電力会社の自主的取り組みとして法規制の対象とされてきませんでした。

 経済産業省原子力安全・保安院は、電力各社の過酷事故時の運転操作の内容を把握していませんでした。これだけの重大事故が起こったにもかかわらず、当初は東電に手順書提出を「要請」するだけでした。今回、国会側の強い要求で、保安院は原子炉等規制法にもとづいて、事故調査に必要として東電に手順書の提出を命令したものです(別項)。

 地震・津波にたいする設計上の過小評価に加えて、注水やベント操作などの対応の遅れが事故の拡大につながらなかったのかどうか―。今後提出予定の残りの部分も合わせ、事故の原因解明を進めることが求められます。同時に、全国の原発でも手順書に問題がないか、点検が求められます。(中村秀生)

吉井英勝議員が談話

 全電源喪失が発生すれば当然、炉心溶融の危険性が高まり、海水注入やベントも含めてとにかく炉心を冷やし続けなければならなくなります。それに対応する手順書がない状態で、対応しなければならなかったことが明らかになりました。

 政府や電力会社は、「原発は安全」と言い続けてきました。安全であることと、過酷事故(シビアアクシデント)対策を考えることは、矛盾した論理になるため考えてきませんでした。まさに「原発安全神話」です。

 私は2006年の国会質問で、電源喪失時の対応を政府にただしました。当時の鈴木篤之・原子力安全委員長の答弁は、他の原子炉から電源を融通できるから大丈夫だという内容でした。同じ敷地内で同時に発生する事態を考えて対策すべきでしたが、それをしなかったことが大きな問題だったことが、今回改めて明らかになりました。

 これまで政府・東電が黒塗りの手順書しか出さなかったことにたいして、国民の怒りや批判が高まり、手順書の公開を求める世論と運動が大きく広がりました。それと、世論にこたえた国会の取り組みが力となって、今回ようやく手順書が公開されました。今後は、資料の中身を精査して、事故がどのようなものであったのか、原因の究明を進めたい。

手順書開示をめぐる経緯

8月26日 衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会が、経産相に福島第1原発の「事故時運転操作手順書」の提出を要求。

9月2日 経済産業省原子力安全・保安院が同委員会理事会に、通常の事故時の手順書の一部のみをほとんど黒塗りで提出。同委員会は、過酷事故時の手順書も7日までに提出するよう要求。

9月7日 東京電力が拒否し、過酷事故時の手順書は同理事会に提出されず。同委員会は経産相に12日までの提出を要求。

9月12日 保安院が過酷事故時の手順書を同理事会に開示。表紙と目次のみでほとんど黒塗りの状態だったうえ、東電の求めで閲覧後に回収。同理事会では「不誠実だ」という声が相次ぎ、法にもとづく提出命令として22日までの提出を経産相に要求。

9月22日 同理事会に過酷事故時の手順書は提出されず。

9月27日 保安院が原子炉等規正法にもとづいて、東電に事故時運転操作手順書の提出を命令。東電、1号機手順書を黒塗りせずに同院に提出。

9月28日 東電が2、3号機の手順書を黒塗りせずに提出。

10月3日 東電が保安院に対して、1号機の手順書を公開する際、内容の3〜9割を不開示にするよう要求。

10月14日 保安院が1号機の手順書の一部公開を東電に通知。

10月24日 保安院が同理事会に1号機の手順書を提出。





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