2011年10月23日(日)「しんぶん赤旗」

主張

選挙制度改革

比例中心の制度に改めてこそ


 衆院の選挙制度についての各党協議が始まっています。最高裁判所で「違憲状態」と判断された衆院の「1票の格差」を解消することが差し当たっての課題ですが、民主党や自民党は小選挙区中心の現在の選挙制度に固執して、各都道府県にまず1議席ずつ配分する「1人別枠方式」の廃止でお茶をにごそうとしています。

 しかし、小選挙区制を続ける限り、「1票の格差」問題の根本解決はできません。国民の意思を国会の議席に正確に反映する比例代表を中心とした制度に改めるなかで、格差の解消も実現すべきです。

1人が2票を持たない

 最高裁判所はことし3月、小選挙区での「1票の格差」が2・3倍だった前回2009年の総選挙について、「違憲状態」と判断しました。憲法が定める「法の下の平等」の原則に照らせば、1人1票が原則で、1人で2人分以上の投票権をもつなどというのはあってはならないことです。

 現在の衆院の選挙制度は小選挙区制と比例代表の並立制で、全国300の選挙区ごとに1人の議員を選ぶ小選挙区の定数は、まず47都道府県に1人ずつ配分し(「1人別枠方式」)、残りの253議席を各都道府県に人口に応じて配分します。各都道府県ではそれに応じて、人口の格差が2倍を超えないよう選挙区を決めます。最高裁は小選挙区比例代表並立制を前提に、この「1人別枠方式」が格差拡大の「主要な要因」になっていると、その廃止を求めました。

 廃止は当然ですが、それだけで格差は解消しません。国立国会図書館の資料は、「1票の格差」は各都道府県に定数を配分する段階でも、各都道府県で区割りを画定する段階でも起きる、全国1区で選挙をおこなえば格差は生じないが、区割りをおこなえば格差が生じるとして、「1人別枠方式の廃止だけで最大格差を2倍未満に抑えることは困難」と指摘します。小選挙区に区割りし、1選挙区で1人の議員を選ぶ方式を続ける限り、格差が生じることは明らかです。

 もともと小選挙区制は、大量の投票が議席に結びつかない「死に票」になり、大政党に有利で小政党に不利な、民意をゆがめる非民主的な制度です。選挙区が小さくなるだけ、地縁・血縁や金権で選挙結果が左右されやすくなるなど、政治の劣化も大問題です。全国を300の選挙区に細分するから、市町村の境界でさえ人為的にくっつけたり切り離したりし、人口の変動ごとにその変更が必要になるのです。田中角栄元首相が小選挙区制で「カクマンダー」といわれる恣意(しい)的な区割りを導入しようとしたなど、党略的な区割りも問題になってきました。民主的な選挙制度をめざすなら、まず小選挙区をやめることが大前提です。

「死に票」も克服できる

 これに対し、得票に応じて議席が配分される比例代表は、民意を直接議会の構成に反映させ、いわゆる「死に票」の問題も大本から克服できる制度です。比例代表には全国を1区とする方法やいくつかのブロックに分ける方法などがありますが、「1票の格差」は極めて少ない制度です。

 「1票の格差」を解消して民主的な選挙制度をめざすなら、小選挙区制を続けるのではなく、比例代表中心の制度に転換することぬきでは、改革の名に値しません。





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