2011年10月22日(土)「しんぶん赤旗」
憲法審査会を始動させるな
憲法を震災復興にこそ生かせ
緊急集会での 市田書記局長のあいさつ
5・3憲法集会実行委員会事務局は20日、「憲法審査会を始動させるな、憲法を震災復興に生かせ」緊急集会を衆院第1議員会館で開きました。日本共産党の市田忠義書記局長のあいさつ大要を紹介します。
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みなさん、こんにちは。ご紹介いただきました日本共産党の市田忠義です。
この10年、国会の召集日に欠かさず、憲法改悪を許さず憲法を暮らしのなかに生かそうと、ねばり強く集会を続けてこられたみなさんのご奮闘に、まず、心から敬意を表します。
《市田氏は、野田内閣が打ち出した復興増税を批判して、庶民増税に頼らなくても復興のための財源はつくりだせることを解明。憲法をめぐる新しい情勢に話をすすめました》
今日は憲法問題に関して三つのことをお話ししたいと思います。
党利党略の改憲策動は許されない
一つは、憲法調査会を始動させる策動の問題です。
今日、衆参両院の本会議で憲法審査会委員の選任を、日本共産党と社民党の反対を押し切って、民主党、自民党、公明党などの賛成多数で強行しました。みなさんとご一緒に満身の怒りを込めて断固、糾弾したいと思います。(「そうだ」の声)
2007年に成立した改憲手続き法は、当時の自民党、公明党による強行採決によるものでした。当時、野党であった民主党も反対するなか、数の力で押し切って、憲政史上に重大な汚点を残したという経過をもつものでした。
これに多くの国民と野党が批判の声を強めたために、法律は施行されたけれども、憲法審査会は実質的なスタートを切ることができませんでした。さらに、改憲をマニフェストに掲げて選挙をたたかった安倍自民党政権が国民から改憲ノーの審判をつきつけられて行き詰まり、自公政権そのものが崩壊しました。
そういうもとで、民主党は「国民の生活が第一」だと公約して2009年の総選挙で政権の座につきました。そのときに、「憲法審査会は始動させない」と明言して政権を発足させた。ところが、みなさんもご存じのように、衆参「ねじれ国会」だという理由で、菅政権の時代からとくに国会対策上、これまで掲げてきた若干の前向きな政策も全部投げ捨てて、完全に自民党の軍門に下りました。
とくに重大だと思うのは、自民、公明の協力を得ないと一切の法律が通らないことを口実にして、日本の国のあり方の根本、民主主義の根本を決める憲法問題を、国会対策の一つとして党利党略的に利用して、野田内閣の発足を機に民主党などが審査会委員の選任を強行したことです。こんなことは絶対に許されません。
野田首相が改憲論者であることも背景にありますけれども、国会対策のために憲法のような重要問題を軽々に扱うということを国民は絶対に許さないと確信しています。
国民が求めているのは改憲ではありません。日本国憲法を生かして、震災からの復興に取り組むことを求めているのではないでしょうか。
同時に、改憲原案を審査する権限をもつ審査会が実際に始動するもとで、日本共産党としては改憲につながる一つひとつの動きを絶対に軽視しないで、改憲を許さないたたかいをみなさんとともにいっそう強化していく決意です。
憲法9条を壊す新たな動きを押し返そう
二つめに、そうした一方で憲法9条を実質的に壊す新たな動きが起こっていることに目を向ける必要があります。
沖縄・辺野古への米軍新基地建設について、野田内閣の閣僚が毎日のように沖縄に足を運んでいます。年内に環境アセスの報告書を沖縄県に提出し、基地建設に向けた手続きを開始したい、と公言しています。
この動きに対して、県知事も名護市長も断固拒否の姿勢をつらぬいています。野田内閣は、アメリカのオバマ大統領から「普天間問題で結果を出せ」と要求されて、いわれるままに露骨に「日米合意」の実行を押し付けようとしています。いったいどこの国の政府なのか。
地元紙はなかなか辛辣(しんらつ)です。「大臣は米国の御用ききか」という社説まで出しています。私は、“アメリカの使い走り内閣”といわれても仕方がないと思います。これが今の政権の体たらくです。普天間基地は無条件で即時閉鎖、撤去する以外に道はありません。
憲法9条の立場で、「沖縄から、日本から基地を撤去せよ」とアメリカに堂々とものをいうのが、日本国政府のやるべき仕事ではないでしょうか。
民族紛争が続いている南スーダンへの自衛隊派遣を政府が検討しています。これも実は、アメリカの要求です。アメリカの財界や兵器メーカーの要求を受けて、武器輸出禁止原則を本格的に形骸化する動きも進行しています。戦闘機などの兵器の国際的開発に加わって、兵器市場への参入に踏み込もうとしています。こうした動きにあわせて、国家秘密保護法を持ち出してきていることも重大です。
比例定数の削減は絶対に許さない
三つめは、民主主義の土台、選挙制度の問題です。
昨日から衆議院の選挙制度に関する各党協議会がすべての政党の参加のもとで始まりました。衆議院の選挙制度をめぐっては、先の最高裁判所判決が違憲と判断した、現行の小選挙区の定数配分規定、すべての都道府県に人口にかかわりなく「1人別枠方式」で配分する規定が問題になりました。この判決は、現行の小選挙区並立制の枠内で当然の指摘をしたものですが、私たちは現行選挙制度の最大の問題は、民意をゆがめている小選挙区制そのものにあると考えています。
小選挙区は死票が5割も出る。4割の得票で7割の議席を独占できる。比較第1党に有利に民意をゆがめる最悪の反民主主義的な選挙制度です。
先々週、NHKのテレビ討論会で、小選挙区制を推進した園田博之さんが、自分の政治生活を振り返って、いちばん悔いてるのは小選挙区制を導入したことだ、といいました。
自民党と民主党以外のほとんどの政党が小選挙区制は政治の劣化を生み、民意を切り捨てるものだと批判しました。国民の意思が正確に反映される比例代表選挙を中心にすることが、1票の格差をなくしていく上でも不可欠だと思います。
国民の多くが国会議員の定数を減らせというのは、政局や相手の揚げ足取りばかりに動いて国民の民意を反映していない、そんな国会議員だったらいらないと、いっているのであって、ちゃんと仕事をする国会議員だったら、誰も減らせとはいわないでしょう。そうさせている土台に小選挙区制があるということをしっかり見る。いちばん民意を反映する比例代表の定数を減らすなんてことは絶対に許せません。
国民に増税を頼むのなら国会議員自ら身を削れといわれます。比例定数80人分を削っていくら節約できるか。3人の秘書の給料を含めて56億円です。もっとほかに減らせるものがいっぱいあるはずです。選挙制度というのは、国民の基本的な権利の問題ですから、国民に開かれた場で時間をかけてしっかり議論していくことが大事です。意見の違いがあっても、比例定数の削減だけは絶対に許さない。みなさんと力をあわせてがんばります。
今度の国会はTPP(環太平洋連携協定)の問題や「税と社会保障の一体改革」など、さまざまな問題がありますが、憲法問題については今の三つの点を重視して、みなさんとご一緒に力をあわせてがんばりたいと思います。(拍手)