2011年10月20日(木)「しんぶん赤旗」
温泉町に客来ない
原発事故の風評被害深刻
福島・猪苗代町
東京電力福島第1原発事故が観光業にもたらした風評被害は、きわめて深刻です。磐梯山と猪苗代湖と自然豊かな温泉の町、福島県猪苗代町を訪ねました。 (菅野尚夫)
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JR猪苗代駅を降りて左側に猪苗代観光協会があります。「東京電力は観光業をつぶすつもりなのか」と、怒りを語るのは同協会の事務局長です。
原発事故の3月11日後、観光客は激減しました。
町内には多くの温泉がありますが、磐梯猪苗代はやま温泉の4月の客数は、600人。前年同月と比較すると9400人も減っています。こうした傾向はどの温泉にも共通で、川上温泉、西ノ沢温泉では1人も来ない月が続いています。
西ノ沢温泉の旅館の経営者は「存続の危機です。これからどうするのか検討しています」「予約していたスキー客も全てキャンセルになった」と言って頭を抱えます。
温泉客だけでなく、同町にある「野口英世記念館」「会津民俗館」「世界のガラス館」などの入館者も減っています。この三つの展示館で前年4月は約3万3000人の入館者がありましたが、今年4月は6650人と8割も減っています。「旅行会社が観光コースから外した」ためです。
商工観光課の担当者は「原発事故がいつ収束するかにかかっています。とくに修学旅行などの団体客が戻ってきていません。対策委員会を作って回復に努めています」と話していました。
ところが、東電は、観光業の風評被害による売上高の減少分のうち20%を原発事故以外の要因として差し引く算定基準を示しています。これに対し「かすみを食べて生きていくわけにはいかない。基準を撤廃すべきだ」と怒りが広がり、県の業界団体などは見直しを求めています。
昨年4月の客数が約3700人だった横向温泉。今年4月は641人でした。同温泉のホテル支配人は訴えました。
「修学旅行やスキー客のキャンセルが来年の分まであった。東電は全面補償をするべきだ」
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