2011年10月18日(火)「しんぶん赤旗」

高台や内陸への集団移転

大きすぎる負担

自治体「制度拡充を」


写真

(写真)低地の住宅が跡形もなく津波で流された指ケ浜地域=宮城県女川町(10月)

 東日本大震災からの復興で、津波で被災した住民が高台や内陸へ移転する「防災集団移転促進事業」が焦点になっています。

予算の7倍以上

 対象は2万戸以上。各自治体で住民説明会が行われていますが、岩手、宮城、福島の被災3県で移転計画を国に提出しているところはありません。移転費用が巨額となるためです。国の補助見直し案が示されていないこともあって、自治体担当者からは「公式を与えられずに計算を解けといわれているようなものだ」という声が出されています。

 現在、移転先の用地取得・造成や引っ越し費用などは国が4分の3を補助。交付税を含めると94%まで国が負担しますが、自治体にとっては6%でも大変な負担です。南三陸町の場合、町負担だけで590億円と試算(5月時点)。年間予算74億円の7倍以上です。

 しかも、1戸あたりの補助限度額は1655万円まで。約2400の対象世帯がある仙台市では、住民の自己負担が3000万円にのぼると報じられています。自治体にとっても住民にとっても、抜本的な負担軽減策が必要です。仙台市が国に補助率のかさ上げや補助対象の拡大を求めるなど、被災自治体は制度の抜本的拡充を求めています。

 集団移転事業を実施するには住民の合意が必要です。住民からは、住み慣れた土地を離れなければならない問題とともに、多額の負担が大きな障害となっているとの声が上がっています。

 こうした中、野田佳彦首相は5日の衆院復興特別委員会で、「地元の負担分は特別交付税で対応できるように工夫していきたい」と表明。第3次補正予算案に1・6兆円の地方交付税加算を盛り込むことが決まり、川端達夫総務相は7日、「震災復興特別交付税」(仮称)を配分し、自治体の実質負担をゼロにするとのべました。

 政府は事業促進のためだとして、「復興特区」を創設し、都市計画法や農地法などの「規制緩和」とセットで行う方針です。また、10戸以上の要件も5戸へ引き下げることが検討されています。住民合意などが守られるのかが重要になっています。

国の全額負担を

 日本共産党は、国が全額負担し、病院や店舗の移転費用も補助の対象とするよう要求してきました。政府への第3次提言(7日)では、「国がどのような支援をするのかが明確になっていないことが、住宅の再建、地域の復興の妨げになっている」と指摘し、全額国庫負担を改めて求めています。 (斎藤瑞季)





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp