2011年10月18日(火)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 体操の名花が20年ぶりに来日しました。躍動感あふれる優美な演技で世界中を魅了し、東京、メキシコの両五輪で計7個の金メダルを獲得したチェコ(当時)のベラ・チャスラフスカさん(69)です▼日本オリンピック委員会主催の東日本大震災復興支援の催しで仙台を訪問。「日本のことは母国のことのように思っている。被災地で(東京五輪を)覚えている方もいるかと思い、金メダルを持ってきた」と、苦難を刻んだ笑顔をみせました▼彼女は母国の民主化運動「プラハの春」を支持し、迫害されます。奪われた名誉はその後回復しますが、さらに家族の悲劇で心の病に。今は元気を取り戻し、国内外で精力的に活動しています▼そのチャスラフスカさんも観戦した先の世界選手権。日本のエース内村航平選手が輝きました。審判さえ見逃すほどの高難度の技を、美しく決める。日本の体操が追い求めてきた理想の演技を全種目に貫き、三たび世界の頂点に立ちました▼内村選手といえば、同僚記者からこんな話を聞きました。子どものころ、母親が絵本を一瞬だけ開き、何が描かれていたのかを問うことで、全体像を素早く頭にイメージする訓練をくり返したそうです。それも、あの異次元の技につながっているのでしょう▼「体操に頂点はない」と、演技の内容にこだわる22歳。五輪の標語でもある「より速く、より高く、より強く」の継承者として、来年のロンドン五輪でどんな演技をみせてくれるのか。世界が楽しみにまっています。





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