2011年10月17日(月)「しんぶん赤旗」

主張

「武器禁輸」見直し

国際社会の信頼も失う暴挙だ


 武器輸出を禁止した政府の「武器輸出三原則」を見直そうとする野田佳彦・民主党政権の動きが急を告げています。

 野田首相は14日、「武器輸出三原則」について「具体的な不断の検討は必要だ」とのべました。菅直人前政権は日米両国が共同開発した弾道弾迎撃ミサイルを米国が認める「第三国」に移転する道を開きましたが、野田政権はさらにふみこんで、米国以外の多くの国々にも武器を公然と輸出できる道を開こうとしています。戦争を放棄した日本を「死の商人」の国にする企てであり、認めるわけにはいきません。

対米忠誠心を誇示

 昨年12月に政府が決めた「防衛計画の大綱」には「武器輸出三原則」の見直しは盛り込まれていません。国民の反対が強く、盛り込めなかったのです。にもかかわらず野田首相が「武器輸出三原則」の見直しにふみだそうとするのは11月に予定される2度目の日米首脳会談で、「武器輸出三原則」の見直しを強く求めてきたオバマ大統領の要求に応えるためです。

 防衛省の「防衛生産・技術基盤研究会」(座長=白石隆・政策研究大学院大学学長)は7月の「中間報告」で、米国経由での第三国移転にとどまらず、日本の兵器産業を国際共同開発・生産に参加させる方向付けを行い、そのために「武器輸出三原則」の見直しを提言しています。民主党も13日の防衛部門会議で、「国際的な武器輸出管理レジーム(枠組み)を有力な目安」にして多くの国との武器の国際共同開発・生産を容認した昨年の方針を再確認し、政府に「三原則」の見直しを提言することを決めました。「武器輸出やめよ」の国民の願いをふみにじるものです。

 「武器輸出管理レジーム」に参加している諸国と武器の共同開発・生産を進めるという民主党の方針はとりわけ重大です。米国を中心に9カ国が進めている最新鋭のF35戦闘機の共同開発への参加も可能にするものです。

 国際的な「武器輸出管理レジーム」に加わる国(26カ国)といってもその半分以上は米国、英国など北大西洋条約機構(NATO)諸国です。日本が軍事協力を強めている韓国やオーストラリアも含まれます。その多くはベトナム戦争やイラク戦争にも参加したことのある国です。他国への武器輸出も積極的に行っています。こうした国と共同開発し生産した武器は、共同開発国を経由して多くの国に流れます。その結果、他国民を殺傷するのは目に見えています。

 日本がこれまで日本企業が作る武器で他国民の命を奪うことがなかったのは、武器禁輸の原則を守ってきたからです。それを見直し、日本を「死の商人」国家に変えるのは日本への国際的な信頼を根本からくつがえすものです。

財界・米国「直結」正せ

 「武器輸出三原則」の見直しをはじめ、南スーダンPKOへの自衛隊派兵や環太平洋連携協定(TPP)交渉参加をめざす野田政権の動きは異常というほかありません。自民党政権ですら国民の反発を恐れてできなかったことをやりとげることによってオバマ政権に取り入り、政権の維持をはかろうとする野田首相の思惑がむきだしになっています。卑屈な「米国直結」「財界直結」では平和も暮らしも守れないことは明白です。





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