2011年10月16日(日)「しんぶん赤旗」

予測なぜできなかった

地震学会がシンポで議論


 日本地震学会は、静岡市内で開かれていた大会最終日の15日に、特別シンポジウム「地震学の今を問う―東北地方太平洋沖地震の発生を受けて」を開きました。地震と津波が甚大な被害をもたらしたことを受け、これまでの地震研究を検証するために開かれました。約500人が参加し、討論しました。

 特別講演でロバート・ゲラー東京大学教授は、地震予知研究は大きな見直しが必要だと問題提起しました。

 東北地方太平洋沖地震をなぜ予測できなかったかについて、松澤暢・東北大学教授は「最近の観測では東北地方のプレート境界にひずみが大きくたまっているとはみられなかったことや、最近100年間のデータに頼ってしまったことがある。推定が過小評価である可能性も見通さなくてはいけない」と話しました。

 井出哲・東京大学准教授は「海域での観測が不十分だったし、地質学的年代スケールでの情報を生かせなかった。今後、短期の『地震予知』と中長期の『地震予測』は区別することが必要だ。社会から地震学に求められていることには、分からないことからくる不安を取り除き、わかることを増やすよう説明することもある」と話しました。

 地震学会が、国の施策にどうかかわるかというテーマの討論では、長谷川昭・東北大学名誉教授は「中央防災会議の専門調査会では、東北地方の地震予測について、貞観地震など過去の大きな地震も検討対象とすべきだという意見が出たが、生かせなかった。これからは、学会で合意した声とともに、多様な意見を社会に伝えていく必要がある」と話しました。

 石橋克彦・神戸大学名誉教授は「地震学は都市の耐震性、原発の危険性などについて発言してこなかった。政治的な中立を守るべきだという意見もあるが、科学的に分かっていることに関しては、その成果に忠実であるべきだ」と指摘しました。





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