2011年10月16日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
刈り取って束ねた稲を干す稲架(はさ)が、田んぼに映えます。「ひろびろと稲架の日なたの日のにほひ(おい)」(長谷川素逝(そせい))▼田んぼの風物詩をもう一つあげるなら、かかしでしょう。「かかし」はもともと「かがし」だった、といいます。人の髪の毛やイワシの頭を焼いてはさみ、あぜ道に立てました。悪臭をかがせて鳥や獣を遠ざけるので、「かがし」というわけです▼悪臭でもいいから、放射能ににおいがあったら。あるいは、悪臭でもいいから、放射能を感知すればにおいを発して知らせるかかしがあったら。ついついそんな想像をめぐらしてしまう、ことしの秋です▼福島県が、米の「安全宣言」を出しました。調べた地点の82%で、放射性セシウムは検出されませんでした。ほかでも、1キロあたり100ベクレルを下回る地点が多い。政府が定める農産物の仮基準、500ベクレルを超えるところはゼロです▼しかし、すでに注文が入らなくなった農家もあります。8月には、ドイツの放送局が56ベクレルの県産ジャガイモを汚染されていると報じ、当否をめぐり議論がもちあがりました。国の仮基準そのものが、信頼をえていません▼日本共産党は、きびしい規制値への見直しを提案しました。値をこえて出荷停止になった作物の場合、その地域の全量を国が買い上げれば、消費者も安心、風評被害も抑えられます。安全でおいしい作物づくりをなによりの喜びとし、国民食料を生みだす仕事を生きがいとする生産者。彼らの苦闘に応えないで、なにが政治でしょう。