2011年10月15日(土)「しんぶん赤旗」

主張

遠ざかる年金

ますます不信広げる「逃げ水」


 民主党政権が年金の支給開始年齢引き上げの検討を本格的に開始しました。

 政府・与党は6月末にとりまとめた「社会保障・税一体改革成案」に、支給開始年齢の引き上げを検討すると盛り込みました。厚生労働省が11日、その具体案として三つの案を社会保障審議会の年金部会に提示しました。

暮らしの影響は深刻

 これまで政府は年金の改悪を繰り返してきました。給付抑制、保険料値上げとともに、支給開始年齢も相次いで引き上げられています。老後の安心を保障するはずの年金は「逃げ水」のように遠ざかり、若い世代を含む国民の老後不安を増大させてきました。

 今は1994年の改悪による厚生年金の定額部分の支給開始年齢の先送りが実行されている真っ最中です。男性は2013年度に、女性は18年度に60歳から65歳への引き上げが完了します。

 2000年の改悪による厚生年金の報酬比例部分の60歳から65歳への先送りは、定額部分の引き上げ完了と同時に開始されます。男性は25年度、女性は30年度までに3年に1歳ずつ65歳に引き上げられることになっています。

 今回の厚労省案は次の三つです。(1)報酬比例部分の引き上げペースを3年に1歳ずつから2年に1歳ずつに加速する(2)2000年改悪による報酬比例部分の引き上げ完了後、厚生年金・基礎年金ともに3年に1歳ずつ68歳まで引き上げる(3)報酬比例部分の引き上げを2年に1歳ずつに加速した上、同じペースで厚生年金・基礎年金ともに68歳に引き上げる―。

 いずれの場合も女性の厚生年金の報酬比例部分の引き上げ開始を18年度から13年度に前倒しするとしています。女性は現行では報酬比例部分の支給を先送りされるのは1958年4月2日以降に生まれた人からです。それが今回の厚労省案では53年生まれの人まで前倒しされることになります。

 実行されれば老後の暮らしへの影響は極めて大きく、若い世代の将来不安と年金不信もますます深刻にならざるを得ません。

 見過ごせないのは、こんな大改悪を進めようというのに、民主党政権は、その理由すら明確に説明できていないことです。議論の発端は1月に与謝野馨一体改革担当相(当時)が「支給開始年齢の延長を検討」と発言したことです。その後、与謝野氏が担当する「一体改革」の集中検討会議で財界団体や「日経」「読売」「産経」の新聞社、経産省などが支給開始年齢の引き上げを主張しました。どれも“ほかの国が引き上げているから”“自助努力すべきだから”など実にいいかげんな理由しかのべていません。厚労省案も似たり寄ったりです。

大義も掲げられない

 政府は04年に年金保険料の連続引き上げと給付引き下げの大幅改悪を強行しました。そのため、年金の財政面では、厚労省は09年の財政検証で38年度以降も現行制度は維持できるとしています。

 「一体改革成案」に基づいて、民主党政権は医療や介護の改悪など次々と社会保障切り捨ての議論を本格化させています。今回の支給開始年齢引き上げの提案は、提案者さえ何の大義も掲げられず、とにかく社会保障は抑制すべきだという「悪乗り」のような議論です。絶対に許せません。





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