2011年10月14日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
先見の明をもつ者。ギリシャ神話に出てくる、プロメテウスの名前の意味です。プロメテウスはいま、“時の神”です。人類に火をもたらした神として▼プロメテウスと弟は、神から人間と動物に生きる能力を与える役目を任されます。動物たちに、力や勇気などを次々とさずけました。さて人間の番になると、ろくなものが残っていません▼彼は、天にのぼって太陽の火を移しとり、人間に与えます。火のおかげで、人間はほかの動物以上の存在になった…。ここまでは神話です。その人間は、原子力の火まで手に入れます。しかし、原発の事故に苦しみます。プロメテウスのわなにはまったように▼しかし、プロメテウスの物語は「火」で終わりません。人間が住む世界の変化をたどります。初めは黄金の時代。自然と人間が共存し、人間同士の間で強制もありません。時が移り、鉄の時代。人間は自然を壊し、人間同士の間で暴力やごまかしが横行します▼仲よく共同で耕していた土地(生産手段)の、所有が始まります。財産めあてで家族愛も失(う)せます。神々は、そんな地上を見捨てた…。ここまでは神話。いま、生産手段の多くを大企業が握り、競争で人間同士の連帯を断ち切ろうとする資本主義の、ゆきづまりが目立ちます▼プロメテウスの話は、さらに続きます。彼は、神々の王ゼウスに、人間に文明を教えたのが罪だとして山の岩につながれ、ハゲタカに襲われます。しかし屈しなかった彼は、いまも、圧制に反抗する者の象徴です。