2011年10月14日(金)「しんぶん赤旗」

主張

米軍機「訓練移転」

爆音被害の解決にはほど遠い


 日米両政府は4日、岩国基地(山口)と三沢基地(青森)の米軍機が嘉手納基地(沖縄)だけでなくグアムや北マリアナ諸島に「移転」して訓練する「訓練移転」を年2〜3回行うことで合意しました。10日から岩国基地の米軍機がグアムで訓練を始めています。

 嘉手納基地所属の米軍機が日本本土に「訓練移転」しても岩国や三沢の米軍機が飛来したのでは騒音が軽減しないとの批判を受けたものですが、米本国からの飛来もあり、減るのはほんの一部です。爆音被害の解決につながりません。

普天間「移設」への思惑

 もともと嘉手納基地に常駐する戦闘機など100機近い米軍機の爆音のために住民は長い間痛みを強いられています。沖縄県の「航空機騒音による健康影響調査報告書」(1999年)も「睡眠妨害」「会話妨害」などをあげ住民に「健康影響が生じている」と指摘しています。「爆音被害をなくせ」の声が噴出しているのに爆音を一掃するための努力を長年怠ってきた政府の責任は重大です。

 県民の怒りを無視できずに政府は、騒音を減らすためとして2007年から嘉手納基地の戦闘機を年数回本土の自衛隊基地に移転・訓練することを始めました。しかしそれは爆音を減らすどころか激増させるだけでした。嘉手納基地から一定機数が「訓練移転」でいなくなると、本土にある米軍基地や米本国などから「外来機」が押し寄せているからです。09年には岩国から15回、米本国から9回も飛来しています。三沢基地や厚木基地(神奈川)などからの飛来も頻繁です。

 新たな日米合意は、嘉手納基地のほか岩国と三沢の米軍機が「訓練移転」の「対象となりうる」というだけのものです。岩国や三沢の米軍機は嘉手納基地以外で訓練をすることもありえますが、爆音被害を激増させた米本国などからの「外来機」は合意の対象外にし、野放しです。嘉手納基地からのグアムへの「訓練移転」も「課題」(一川保夫防衛相)というだけです。これでは沖縄県民の「爆音被害をなくせ」の願いに応えられるはずはありません。

 見過ごせないのは、「訓練移転の拡充」の合意には、「負担軽減」を示すことで米海兵隊普天間基地の名護市辺野古への「移設」を前に進める思惑があることです。そのために野田佳彦首相がうちだしたのが、12年度政府予算の概算要求での沖縄振興予算の増額であり、「訓練移転の拡充」です。まさに沖縄県民の目をそらし反対の声を弱めようというものです。米国の要求のために「移設」に反対する県民の総意をふみにじるなど言語道断です。

「訓練移転」費やめよ

 「訓練移転」のための費用分担を政府が決めたのも重大です。岩国基地や三沢基地とグアム、北マリアナ諸島間を往復する米軍機の燃料費や米兵の滞在費の約75%を国民の税金で負担するというのです。小さい額ではありません。沖縄県民に無法な爆音被害を押し付ける米軍のために国民の税金を投入するのは許されません。

 「アメリカ直結」の外交姿勢では県民の願いはかなえられないのは明らかです。政府は「小手先」の対応をやめ、爆音被害をなくすため本腰を入れてとりくむことが重要です。





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