2011年10月13日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
さきの連休に、信濃路から北陸へと所用で車を走らせました。秋の風景の美しさに目を奪われます▼とくに取り入れ真っ最中の稲田に息をのみます。場所により真っ黄色に実った田んぼもありますが、刈り入れが終わり稲株だけが一面に広がるのも美しい。日本の秋の豊かさを実感しました▼同じ頃、群馬県を訪れ、コンバインを操作して稲刈りを体験した野田佳彦首相は、環太平洋連携協定(TPP)への参加検討を急ぐよう政府・民主党に指示したと発言しました。さっそく連休明けには閣僚会合で検討を開始。美しい秋も暗転です。野田首相には豊かな実りは目に入らなかったのか▼農産物などの関税をゼロにするTPPが、日本の農業に大きな打撃を与えることは明らかです。さすがに野田氏が視察した農家からも、「締結されれば壊滅的な打撃を受ける」と懸念が出たとか。当然です▼農家にとって秋の実りは1年間の苦労の結果です。その苦労を根こそぎにしかねないTPP参加。農家にとって死活問題なのはもちろん、日本全体にかかわる大問題です。アメリカや財界が求めるからと、そのTPP参加を何がなんでも進めようという野田首相。「お天道様は許さない」と一喝したいところです▼せっかく実りの秋が来ても大震災で作付けできなかったところもあります。放射能汚染に不安を募らせたところもあります。野田首相が急ぐべきはTPP参加ではなく、こうした被害の復旧と賠償、汚染を取り除くことでしょう。