2011年10月13日(木)「しんぶん赤旗」

主張

被災地の冬到来

寒さ防止にあらゆる対策を


 東日本大震災の発生から7カ月たちました。各地からの初雪や初氷の便りとともに懸念されるのは、被災地のきびしい寒さへの対策です。学校などの避難所に残る人は少なくなり、仮設住宅などで暮らす人が増えています。プレハブなどの住宅で被災者が寒さに苦しむことがないよう、窓や壁、床などの断熱や保温、暖房器具の手厚い手配など、一刻も早い対策が求められます。

仮設で迎える初めての冬

 岩手や宮城、福島など、被災者の多くは震災前もきびしい東北の寒さのなかで暮らしてきたとはいえ、仮設住宅などで迎える冬は初めての経験です。「夜の寒さで目が覚めた」「風よけがないので玄関に直接寒風が吹き込んでくる」「暖房器具が足りないので一部屋だけの暖房で我慢している」―被災者の訴えは切実です。

 とりわけプレハブなどが多い仮設住宅では、「寒冷地仕様」になっているとはいっても、壁一枚、窓ガラス一枚では、きびしい寒さは防げません。多くの仮設住宅はくいで床を支えているため、床下を吹き抜ける風の冷たさは特別です。寒さがきびしい地方では玄関先に風よけの囲いを作り、冷たい風が直接玄関に吹き込まないようにしているのが普通ですが、仮設ではその「風除室(ふうじょしつ)」が整っていないところも少なくありません。これでは寒さは防げません。

 仮設住宅ではなく、公共住宅や民間のアパートなどに入ることができた被災者にとっても、暖房用具の不足や寒さを防ぐ寝具や衣類が足りないのは同じです。こたつはあってもこたつ布団がない、冬用の防寒具が足りず外出できないなど、悩みは深刻です。

 冬の到来を前に厚生労働省は9月末、仮設住宅の寒さ対策について壁や床への断熱材の追加や窓の2重サッシ化などを通知しました。しかし実際の仕事は県や自治体任せです。岩手や福島に比べ対策への着手が遅れた宮城県では、10月末にならなければ工事が始まらないというところもあるというありさまです。本格的な冬の到来に間に合わない危険があります。

 暖房用具の追加や冬物衣料の配布などが始まったところもありますが、どこでも長蛇の列です。被災者がきびしい寒さで苦しむことがないよう、考えられるあらゆる対策を一刻も早く、政府の責任で実行することが求められます。

 東日本大震災が発生した3月半ばは、東北地方はまだまだ冬のさなかでした。被災者はきびしい寒さの中、着の身着のまま、避難生活を始めることになりました。そうした被災者が、再び訪れる本格的な冬を前に、寒さにおびえなければならないというのは絶対に許されません。被災地での寒さ対策にあらゆる対策を総動員することは、政府の重大な責任です。

再び“人災”繰り返すな

 大震災で深刻な被害を受けた被災者が、7カ月にもわたる避難生活で苦しみ、さらに仮設住宅などでの寒さ対策が不十分なため、苦しめられるというのはまさに“人災”そのものです。被災者が苦しまなくていいようにするのは、憲法13条の幸福追求の権利や25条の最低生活保障の国の責任に照らしてもあいまいにできません。

 寒さ対策を尽くし、被災者が安心して暮らせるようにすることこそ、復旧・復興の大前提です。





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