2011年10月12日(水)「しんぶん赤旗」

主張

TPP交渉参加

なにがなんでも突き進むのか


 野田佳彦政権が環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加に足を踏み出しました。

 TPPは日本農業に壊滅的打撃を与え、経済のあり方を大きくゆがめます。東日本大震災の被災地は日本の食料基地であり、TPPの影響をまぬがれません。大震災から7カ月、復興が進まず政府の責任が鋭く問われるなか、被災地をさらに痛めつけるTPP参加に突き進むことは許されません。野田政権が「米国・財界直結」であることを示すものです。

大規模化で対応できぬ

 食の「安全・安心」を通じて、国民の農業への関心が高まっています。環境保全の面でも農業が果たす役割はきわめて重要です。その指標である日本の食料自給率はいま先進国最低の39%です。食料自給率を抜本的に引き上げることは国民要求であり、政府の重要な責務です。民主党も2年前、「食料自給率の向上」を掲げて政権についたはずです。

 TPP参加は、政府の自給率向上の責務を投げ捨てるものです。「例外なき関税撤廃」を基本とするTPPへの参加で、日本農業が大打撃を受けることは政府も認めています。農水省試算によれば、食料自給率はTPP参加で13%にも落ち込みます。それどころか、TPPのもとでは「食料自給率」の考え方そのものを放棄することになります。安全や環境への影響がどうあれ、価格さえ安ければ消費者にとって“得”というのが、自由貿易の考え方だからです。

 TPPには米国やオーストラリアなどの食料輸出国が参加しています。農業経営は自然をはじめ国土のさまざまな条件に左右され、国によって経営規模に開きがあります。農家1戸当たりの経営規模は、米国が日本の99倍、オーストラリアは1902倍ととてつもない開きがあります。これらと対等に競争しろというのはまったく無理な話です。

 政府はTPP対策として、経営の大規模化によって日本農業を“強く”するといいます。海外の農産物と競争し、輸出もできるようにすると夢をふりまきます。しかし、TPPによる打撃は規模拡大で乗り越えられるものではありません。仮に政府がめざす規模に達しても、もちこたえられる保証はまったくありません。

 北海道の農家は大規模経営が多く、1戸当たりの経営規模は全国平均の10倍です。その北海道でさえ、TPP参加で米、小麦、砂糖、でんぷん、乳製品などが大きな影響を受け、食品工業など関連産業も合わせれば2兆1千億円もの損失になることが見込まれています。北海道は経済界こぞってTPPに反対しています。経団連の米倉弘昌会長が先週、北海道に乗り込んで交渉参加を主張したものの、農業団体の「断固反対」の声に跳ね返されたのは当然です。

反対の声で追い詰める

 経団連や民主党は大規模化と並んで、加工・販売と連携させた農業の「6次産業化」を打ち出しています。しかし、TPPによる打撃は食品加工や流通に波及し、地域経済全体が深刻な影響を受けないではいられません。そのなかで、農業の「ニュービジネス」化が支えになるでしょうか。

 交渉に参加すれば、離脱は困難です。参加反対の声で政府を追い詰めることが必要です。





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