2011年10月12日(水)「しんぶん赤旗」
年金支給 また先延ばし
厚労省 68〜70歳開始を提案
厚生労働省は11日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会に年金の支給開始年齢引き上げを提案しました。現在、支給開始年齢は段階的に60歳から65歳に引き上げられている最中です。この引き上げスケジュールを前倒しすることと、支給開始を68歳ないし70歳まで引き上げることの検討を求めています。基礎年金の支給開始を1歳引き上げるごとに、引き上げ年において約0・5兆円の公費が削減できると試算しています。
60歳支給開始の厚生年金(報酬比例部分)を、男性については、2013年度から3年ごとに1歳ずつ引き上げるのが現行の引き上げスケジュールです。これを2年に1歳ずつに早めます。女性の厚生年金(同)は、18年度から引き上げ開始となっているのを前倒しし、男子と同様に13年度から引き上げるとしています。
最も早い前倒しスケジュールでは、61歳から支給開始の予定だった男性(現在57歳)が62歳に先延ばしされます。それにより厚生年金の給付費が0・8兆円減るとしています。
その後、支給開始を65歳からさらに68歳に引き上げた場合、男女とも1960年度生まれの人から、基礎年金・厚生年金とも68歳支給になります。
国民の生存権をおびやかし、老後への不安を増大させます。
解説
老後不安 景気にも影響
年金の支給開始年齢の先延ばしは、国民生活にかかわる大問題です。現行制度で受給できるはずの年金を大幅に削減することになり、高齢期の生活に大きな打撃を与えます。高齢者の就職状況は非常に厳しく、生存権を脅かすものです。
民主党政権は、「税と社会保障の一体改革」のなかで、「日本の社会保障は高齢者に偏っているから、若い世代にも振り向ける」などといって、世代間対立をあおり、高齢期の社会保障を切り捨てようとしています。
しかし、年金支給年齢先延ばしで、年金受給額を大幅に減らされるのは、現在の現役世代です。
老後の不安を増大させることで消費を冷やし、ひいては景気を悪化させます。
もらえる年齢になると思ったら、先に延びる“逃げ水”のようなやり方は、年金制度への信頼も失わせることになります。
この日の年金部会でも、委員からは反対論が多数出されました。
基礎年金の支給を先に延ばした場合、1歳の先延ばしで年間5000億円の公費節減になります。旧自公政権の社会保障2200億円削減路線への国民の怒りを受けて政権についた民主党は、ここにきて、自公政権同様、あるいはそれを超える社会保障削減に踏み込もうとしています。
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